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作品名:DOMINO 作者:獅子丸

第2回   最終兵器、佐藤
ああ、またか。
喫茶店のドリンクバーに一番近い席で俺は今日も彼女を見ていた。好き?そんなんじゃない。俺は彼女の仕事っぷりを見に来ているのだ。彼女はいつも俺を楽しませてくれる。ある意味、好き、かもな。
彼女の名前は佐藤さん。苗字一番多いでしょうランキング上位の苗字だ。俺は佐藤さんの事を、最終兵器と呼んでいる。何故最終兵器なのか、俺の話しを聞いていれば分かる。
 佐藤さんは若くしてチーフだ。たまに客が新米かなんかに文句をつける時があるだろう?責任者を出せって言うアレだ。その時に出てくるのが佐藤さんだ。
「申し訳ございません。今後このような事がないようにしますので」
 普通はこれだろう。佐藤の場合はこうだ。
「はい、佐藤です。申し訳ございません。今後このようなことが…」
 兵器はまず、名乗る。聞かれてもいないのに名乗る。そして基本の謝罪の言葉を口にし、深々と頭を下げた後、チーフらしからぬ行動に出る。
 まず、新米が飲み物をこぼした場合、普通は拭くよな?しかし兵器はちがうのだ。兵器は新しい飲み物を注いでくる。それも慌てて。察しの通り、兵器はおっちょこちょい、いや間抜け、いや馬鹿だ。慌てて飲み物を注いできた結果がどうなるのか、もう分かりきっている。兵器は何もない所で躓く。兵器は足が弱いので綺麗に体勢を立て直すのは無理がある。だから結果的に客にコップごとぶちまける。兵器は意外と強がりだ。自分の失敗を認めたくないので、最後にぼそっと呟く台詞がある。
「想定の範囲内です。うん」
 お前、冷静ぶってるが足めっちゃ震えてるぞ。しかも自画自賛すんな。と、今日も心の中で突っ込んでいる俺。今日も暇つぶしになってくれたことに感謝しています。
 佐藤の奮闘は明日も続くのだった。


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