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作品名:トラリーノ 作者:

第1回   タカヒロ編

私がタカヒロと出会ったのは12月某日。

その日は今年一番の寒さかと思うほどだった。

その時の私は、恋からも勉強からも運に見放されていて、かなりやさぐれていた。

何から何までどうでもよかった。

クラスメイトが「愛>金」なんてほざいているのを聞くのさえもうんざりだった。

学校から帰る途中に携帯を開くと2〜3通の迷惑メール。

もし、こんな心境でなければ即削除するのだが

この日のあたしは、出会い系サイトにログインしてしまったのだ。

自分の自己紹介的な文章と写メを貼り、送信。

数秒で30通もの返信が来た。

こんな昼間から、よく人が集まるもんだ、と逆に冷静になった。

メールを開くと、さまざまな男たちの写メと、無理して打ったであろう文章があった。

ちょっとは面白いかも。なんて思ってやってみた出会い系。

意外とつまんないなーと思っていた。

しかし、20通目のメールを開いたとき、私の中で何かがはじけた。

今までとは感じが違った。

直感、シックスセンス、あたしの感情は、そういうあやふやなものとして形容される。

あの時感じたのは何だったのか?

それは今でも分からない。



「タカヒロ」とメールをし始めたが、何か変わった感じがするわけではない。

あたしはメル友から恋愛につながった経験があり

しかもそれは失敗、そう、傷つけられて終わったのだ。

だからあたしは傷つくの怖さに、恋愛にも一歩引いた目で見ていた。

しかしタカヒロは別だった。

なぜか、そう、なぜか、彼のメールだけは純粋に見えた。

恋は盲目。まさにその通り。



2週間ほどメールをすると、彼のほうから「会いたい」と言って来た。

あたしは2度目まで断ったが、3回目は断れない状況になり、ついに申し出を受けた。


近くの小学校に夜10:30に集まって、飲む。というものだった。

当日、私は小学校に待ち合わせの10分前に付く。

しかし彼からは「ちょっと遅れる」というメールが。

あたしは時間にルーズな人が嫌いだったので、タカヒロがちょっと嫌になった。

数十分後、彼は息を切らせて私の元に来

私の肩に手を置いて「つかれたー」と言った。

12月の寒い中、数十分も待っていたあたしに謝罪の言葉は無い。

しかも立ったり座ったりしてソワソワしているのが気に入らなかった。

ここで、友達から確認電話が来る。

あたしは小心者だったので、友達に安全かどうか確認してもらえように

事前に電話をしてもらう約束をしていたのだ。

友達には、安全だったときの会話を、練習どおりにした。


電話を終えると彼は、私が誰と電話をしたのかが気になったらしい。

別に教えなくてもいいだろう、と私が思っていたら

彼は機嫌を損ねたようだった。

彼の話はつまらなく、知的さのかけらもないものだった。

私はついに飽きてしまった。

しかもそれを察したのか、あたしの生活スタイルへの批判

あたしの友達関係への批判、さらにはあたしの家族の悪口まで言われた。


何でこんなに赤の他人に言われなきゃいけないんだろう?

あたしは悔しくなって涙が出てきた。

あまりの悔しさに、その涙はあたしの頬を伝って流れ落ちた。


それから30分掛けて彼を振り切り、彼と別れた。

あまりのむごい時間だったことを、友達に報告した。

涙はあとからあとから溢れてきた。

全てが悔しかった。

「愛<金」そんな野暮なことを言ったのは誰だ?

メールで感じていた何かは、もう何も感じなかった。

家に帰ると、タカヒロから

「ごめん、さっきは緊張してて上手く話せなかった。もう一度会いたい」というメール

あたしは、もうメールを返す気力さえなかった。

あたしは化粧も落とさず、制服のまま眠った。

何もかも忘れたかった。


次の日起きると、もう朝は終わっていた。

泣いたせいで、まぶたは鬼のように腫れていて

化粧で顔はベタつき、制服はしわくちゃだった。

にっくき携帯を見ると、タカヒロからひっきりなしにメールや電話が着ていた。

もう返さなかった。

昨日の寒さのせいで風邪をぶり返したのか、熱が出て頭痛がする。

あたしはその日一日中ぼーっとして過ごした。


あたしの手には、携帯が握られていた。


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