「やっほ〜!姫ちゃん!」 元気のいい声が教室内に響き渡る。 このごろ頻繁に姿を現すのは酒匂陽平君。 「また、あなたですの?迷惑ですわ!いい加減にしてくださいまし!」 ランちゃんがここまで嫌悪感を出すのも珍しいくらい酒匂君はすごかった。 背も高いし、顔もいい。モテルタイプだと思うんだけど・・・・ この軽すぎる性格がランちゃんの癇に障るらしい。 たぶんこの世で一番嫌いなタイプの男の子だと思う。 酒匂君がどうこうというより生理的に受け付けないのだとか・・・・ 私はいい人だと思うんだけどな・・・・
自分の顔を見つめる私に気づき酒匂君が声を掛けてきた。 「お!よしのちゃん!今日も可愛いね〜」 やっぱり軽い。 愛想笑いの私の近くに寄ってくると耳元でささやいた。 「その後、良とはうまくやってる?」 その言葉に私の体が固まる。 「・・・・・・・・・・・・・・」 「?よしのちゃん?」 私の様子に気づいたのか心配そうに顔を覗き込む酒匂君。 「あっ、ううん何もないよ」 咄嗟に笑顔を作ったが、酒匂君は何かを察したらしい眉間に皺を寄せて考え込んでいる。 そのまま私の頭をポンポンと二回叩くとその場を去ってしまった。
「あらっ今日はあっさり帰りましたわね。珍しい・・・」 ホッと胸をなでおろすランちゃんをマサがからかう 「なんだよラン〜ひょっとして寂しいのか?」 「そんな事・・・冗談でも口にしないで下さいまし・・・」 すごい形相で睨みつけるランちゃんから目を逸らすマサ 「にしても、よしの・・・あいつと何話してたんだ?」 マサの言葉に作り笑いで答える。 「何って別に・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・よしの」 二人顔を見合わせ暗い顔で考え込む 「・・・・?どうしたの?二人とも・・・・」 「おまえな〜、そろそろ話してもいいんじゃないか?」 マサが私の右頬を軽くつねる 「そうですわ・・・・自分から話してくれるのを待っていましたのに・・・・・まさか、気づいてないとでも思ってらして?」 ランちゃんが左頬をつねる 「い、痛いよ〜二人とも」 「じゃあ泣け!」 「笑いたくない時は笑わなくてもいいのです」 「泣きたい時は泣くのが一番だぞ?」 「泣かないと、先へは進めません」 二人は私の頬から手を離すことは無く続ける。 「ほら?ほっぺた痛いんだろ?泣け泣け」 「あら、いやだ。マサったらガキ大将のようですわ」 「・・・・・・・・・・・マサよりランちゃんの方が痛い・・・・・」 「あら、失礼」 そう言いつつもランちゃんの手は緩まらない。 頬っぺたが痛い・・・・・・・・ 心も痛い・・・・・ 気がつけば私の目からは溢れんばかりの涙が止めどなく流れ落ちていた。 それは二人が手を離した後もずっと流れ続けて 結局私が落ち着いたのはその日の放課後の事だった。 その間二人は(体調不良で保健室にいることにしている)私の付き添いなどと言って、先生が止めるのも聞かずずっと私についててくれた。
そうだった・・・・・・・ 私にはランちゃんとマサがいたんだ こんなにも頼りになる親友が二人もいた
私は今までの経緯を全部二人に話した。 話すのは辛いと思っていたけれど、二人に話していくうちにだんだん心が軽くなるのがわかる。 人に聞いてもらえるって大切な事なんだと 私はまた一つ学んだ。 抱えきれない私の心の錘(おもり)を少しずつ二人が持ってくれるみたい
誰かが言ってたっけ・・・・ 「喜びは2倍に、悲しみは半分に」 まさしくそんな感じだ。
最後まで黙って聞いていたランちゃんが私を抱きしめる。 「信じられません・・・・あんなに人と関わる事を怖がっていたよしのが・・・・・こんなに人を好きになれるなんて・・・・」 ランちゃんの綺麗な瞳が潤んでいる 「とっても素敵なことですわ・・・・・だから・・・・・・・大事にしなければ」 「私は反対だ!よしのは襲われかけたんだぞ?むりやり奪われて!あいつ絶対ゆるさない!」 ランちゃんとは対照的にマサは拳を握り締めて、本気で私の為に怒ってくれている 「マサ!それは、よしのが決める事ですわ!よしのは許しているのですからマサが口を挟む事ではありません!」 「じゃあ、ランはよしのの相手があんなヤツでもいいと?」 強い口調でマサを戒めるランちゃんに負けじとマサも抗議する 「頑なだったよしのの心を揺さぶったのはわたくし達ではなく彼です・・・・」 「・・・・・・・・・っ、でも・・」 「彼の想いの大きさによしのの心も動いた・・・・・・・・・・・・・・ですわよね?よしの・・・」 柔らかい微笑みを浮かべて私を見つめるランちゃん 私はただ小さく頷いた。 マサは溜息をつくと私の頭を優しく撫でてくれた。
「でも、もう駄目だよ・・・・・・・彼は新しい相手を見つけたんだから・・・・・・・・今更だよ」 「ほら!それです!それが自分を蔑(ないがし)ろにしてると言うんです!」 ランちゃんは人差し指を立てると眉をつりあげて私に詰め寄る 「よしのは眞田君が自分以外の人を好きだからって嫌いになれるんですの?」 大きく頭(かぶり)を振る私に「でしょ?」と満足げなランちゃん
「彼が誰を選ぼうが、よしのの気持ちには関係ありませんわ!好きという気持ちは無駄ではありません」 「気持ちは無駄ではない?実らない想いなのに?」 「もちろんです!想う心が大事なのです。沢山悩んで人は成長するのだと、わたくしは思います」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・想う心が大事・・・」 ランちゃんの言葉は私の中にすーっとしみこんできて胸の奥にあったつっかえをキレイさっぱり消してしまった。
吹っ切れてしまえば悩んでいたのが嘘みたいに心は爽快で 彼の事を考えると胸は少し痛むけど 痛むのは彼に対する想いの大きさなのだと分かったから・・・・・ その心は醜いものじゃないって教わったから・・・・・・・・・ もう心は苦しくない・・・・・・・ だからこの想いをあなたに伝えようと思う たとえ、それが彼にとって迷惑だったとしても 初めての恋心なんだもの ちゃんと伝えたい
私はあなたが好きです
あなたに会いたい・・・・・・・・・・・・・・・
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