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作品名:彼女のキモチ、彼のオモイ。 作者:てん、

第12回   ―眞田良SIDE― (3)オモイ
沙耶はあれから俺に付きまとわなくなった。
金田も姫嶋、京極達からきつくお灸を据えられたようで彼女に付きまとう事無く大人しくしている。
ファンクラブも解散した(させられた)とかしないとか・・・
なんせ、衣替えが始まる10月には噂も落ち着き彼女も俺も平穏な学生生活に戻りつつあった。
まぁ、もっとも俺の方は相変わらずの剣道三昧で大会や遠征などで半月ほど学校にも来たり来なかったりで(来ても寝てるだけ)噂どころではない生活を送っていて気がつけば元通りの日常に戻ってたぐらいの感覚なのだが・・・・・・・・・

彼女と俺の関係も特に変化するわけでもなく・・・・・
それでも噂になる前までは声を掛ければ返してくれる事が多少なりともあったような気がするが、それすらも無くなり明らかに彼女は俺を避けていた。
いや・・・・・・・・前から避けられていたのだから、やはり状況は何も変わっていないのだ。
彼女が俺を許す事などあるはずがない・・・
あの時の笑顔は俺の勘違い・・・もしくは彼女の気まぐれか・・・・同情・・・・だったのかもしれない。
ただ確かな事は彼女にとって俺の気持ちは迷惑なだけなのだということ。
彼女を見守るという事すら許されないのかもしれない・・・・・

でも、おまえに迷惑を掛けないから・・・・・・・・・・・・・
おまえを好きだという気持ちだけは俺から取り上げないでくれ・・・・・・・・・

これほどまでに人を好きになる事はもうないと確信できるんだ・・・・
この先どんな出会いがあったとしても
こんなにも激しくこんなにも溢れるほど恋焦がれる相手には決してめぐり合えない
君が最初で最後・・・・・・・・・

俺の初恋

■■■■■■■■

「なぁ・・・・お前・・・変わったよな・・・・」
終身時間を過ぎた真っ暗な部屋で二段ベッドの下から陽平が突拍子も無く話しかけてきた。
とっくに寝ただろうと思っていたので少し驚いて、ベッドサイドのランプをつけ身を乗り出した。
陽平はベッドにもたれ掛かり膝を抱えて座っている。
「寝ないのか?」
「・・・・・・ま〜ね・・・・・」
その様子はいつもの軽いお調子者ではない。
きっと何かあったのだろうと、俺も起き上がると陽平の向いに座った。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・何かあった?」
「?・・・・・・・・それは陽平だろ・・・・・・」
「ちげーよ、・・・・・・・・良、なんか丸くなったつーか・・・・なんか、よしのちゃんとあったのかなーって・・・・・・・」
「別に・・・・・俺の事はいいだろ!お前こそ何があった?」
「俺っちはいつもどーり!なんも、ねーよ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・ぁんだよ?」
「別に」
「ちぇっ」と陽平はそっぽを向く。
俺と違って、なんにしても器用にこなす陽平が悩み事なんて珍しい事もあるものだ。
こいつでも、うまくいかない事があるのだなと新鮮で親近感を感じる。
口元が笑ってしまったのか、俺の顔を見たとたん陽平が不機嫌になる。
「なぁにがおかしんだよぉ〜こんのぉお〜笑ってるのはこの口かぁあ!」
「ハハッ・・・やめろって!わかった!わかった!」
俺の口を抓ろうとする陽平の手をさらりと交わし笑いをこらえてストップをかける。
「で?」
「良が話してくれたら、俺っちも話す」
「はぁ?なんだソレ」
「いいんだよ!お前らがうまくいけば!」
「馬鹿か」
訳の分からない事を言って話を逸(そ)らされる。
もうこうなってしまうと陽平のもので、さっきまでの暗い顔は何だったのか気がつけば元の陽平にすっかり戻ってしまっている。
「うまくいってるんでしょ?よしのちゃん最近急に可愛くなったもんなぁ〜」
ニヤニヤしながらからかってくる陽平に素っ気無く応える。
「彼女とは何もない。むしろ俺は嫌われている。」
「・・・・え?まさか・・・そんな・・・・・・・・・・・・・なんで!!・・・・・そんなわけないって!」
「どうもこうも仕方がないだろ?こればっかりは!ほら、もう寝るぞ・・・」
何を根拠にそんな事を言っているのかは分からないが、
急に変わった陽平の態度を不思議に思いながらも俺はそれを簡単にあしらいながら自分のベッドへ戻る。
「違うんだよ!良!ちょっと聞けよ!」
あまりに真剣な陽平に梯子に掛けた足を止める。
「どうした?何をそんなに真剣に・・・・」
「お前こそどうしてだよ!あんなに好きだったくせに!!」
「!?」
「良は何も分かってない!!」
「陽平こそ!お前になにがわかるていうんだ!!」
無神経な陽平の言葉に俺の声色もきつくなる。
「・・・・・・わかるよ・・・・・・あの子を見てればわかる・・・・・・・・・」
「陽平?」
「あの後・・・俺がお前とよしのちゃんを引き合わせた後、時々よしのちゃんにお前の近況報告みたいなことしてて・・・」
もちろん俺にとっては初耳だ。なんで、わざわざそんな事・・・・。
「あの時のよしのちゃんはお前に恋してる顔してた・・・・・」
「な・・・・、やめろ!お前の勘違いだ!彼女にとって俺は迷惑な存在にすぎない・・・」
なんで今更・・・・・・・・・・・・期待させるような事を俺に言うな・・・・・
俺の気持ちなんて無視して陽平は続ける。
「良こそ勘違いしてるんじゃねぇの?よしのちゃんが言ったのかよ!お前が嫌いだって!迷惑してるって言ったのかよ?」
「言わなくたって態度でわかる!」
「それが勘違いじゃねぇか!・・・・・・もぉいい!お前に何言っても無駄だわ・・・・・・・・・そうやってよしのちゃんを傷つけ続けるんだよ・・・お前は!」
そう吐き捨てて陽平はベッドに潜り込んだ。
陽平の最後の言葉は俺の胸に突き刺さった。

俺の態度が彼女を傷つけ続ける・・・・・・・・・・・?

陽平の言ってる事は俺にとって都合のいい事ばかりで、全然信用出来なかったが
小さな・・・本当に小さな希望を俺の中に芽生えさせてくれた。
都合のよすぎる期待が・・・もう一度俺に勇気を与えてくれる。
もう一度・・・・彼女に思いを告げてもいいのだろうか・・・・・・
その権利が俺にまだあるのだろうか・・・・

その夜は眠れなかった・・・・・・・
希望と期待と不安・・・絶望、色々な感情が俺を支配して寝かしてなんてくれなかったんだ・・・・・・


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