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作品名:彼女のキモチ、彼のオモイ。 作者:てん、

第10回   ―眞田良SIDE― (1)変化
最近、何かと周りが五月蝿(うるさ)い・・・・・・
その理由はわかっている。
予想外に全国大会の結果が良かったからだ。
それには満足している。
俺なりに良くやったとも思うし・・・・・・・・・やはり、彼女のおかげで出せた結果だろう。
彼女に対しての面目もたつ。(まぁ、これは自己満足のようなものだが・・・・)
だが・・・・・・・
はっきり言って、この今の状況は不愉快だ・・・・・・
次から次と呼び出されては同じ言葉の繰り返し・・・・・・
俺が言うのもなんだが、ここまで気持ちを押し付けられることが苦痛だとは思わなかった。
毎回断るごとに使う体力は試合に使う体力にも勝る気がする・・・・・・
ここにきて、ようやく自分が彼女にしてきた横暴な振る舞いに気づかされる。

そして、
また一人俺の眠りを(狸寝入り)妨げるのは・・・・切れ長な瞳が印象的な少女だった。

あ、ちょっといい女
・・・・・・・・・・・・・じゃないだろ俺・・・・

その少女に連れられて教室を出る。
廊下の窓から教室をのぞき見ると、彼女→岡野良は
姫嶋となにやら話しに夢中で俺のことなど気に留める様子はない・・・・・・・だけど

・・・・・・・・・・・彼女が笑っている・・・・・・・

俺はその姿を見て少し微笑む。
彼女の笑顔を見たのは久しぶりで、やっぱり彼女は笑った顔が一番だ・・・なんて思う。
たとえ、それが俺に向けられているものじゃなくても・・・・・・嬉しかった。
あの日以来、彼女とは話していない。
夏休み明け久しぶりに見た彼女は、なんだかキラキラしていて・・・・・動揺してしまった。
俺の中の彼女への気持ちはかわらないけれど・・・・・・
それは明らかに以前とは違っていて・・・・・・
抑えることの出来ない激しいものではなく、
湧き出る泉のような・・・・止まることはないけれど静かに流れていく。
ゆっくり自分の気持ちと向き合える。
彼女が俺にしてくれたように目の前の少女にもしてあげられたら・・・・・・・と思うのだが
どうも・・・・最近の女子高生の考えていることはよく分からん。


「ねぇ、付き合ってよ!」
その清楚な外見からは想像できない少女の軟派な口振りにあっけにとられながらも
当たり障りない言葉を頭の中で探す。
「あー、えっと悪い・・・・・・」
目の前の少女は「付き合えない」と答えた俺の言葉にめげる様子もなく
俺の腕を自分の胸元で抱きかかえるように掴んだ。
「ねぇ、なんで?」
「なっ!」
うろたえる俺は、慌ててその腕を振り解こうとするが少女はしっかり掴んで放さない。
「お、おい!」
「なんで?理由(わけ)をおしえてよ!教えてくれたら放してあげる!」

なんだ!こいつ!!!!!!

「・・・・・・・・・・・・・っっっっ」
突き飛ばすことも出来たが、俺に想いを寄せてくれているのを考えると無下にも出来ず
しばし悩んだ後、口を開いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・好きなヤツがいるから・・・・・・・・」
テレまくる俺のやっとこさの言葉を聞いて少女は俺を解放した。
「・・・・・・・・・付き合ってるの?」
「・・・・・・・あーーっ、いや・・・・・・・・・」
ばつが悪そうに答える。
「じゃあ、いいじゃん!」
切れ長の瞳をこちらに向け少女はあっけらかんとしている。
「いいって・・・・・・なにが?」
少女の発する言葉の意味がよく分からず思わず聞き返す。
「カノジョいないんでしょ?じゃあ、あたしと付き合ってよ!」
「はぁ?」

こいつ・・・・・・・・・馬鹿か?

明らかに嫌そうな顔をする俺に気づき少女は慌てて付け足す。
「別に今すぐ恋人になってとは言わないわよ!!・・・そう!お友達から始めましょ?ね?ね?」
さっきまでの強引さはなく、すがる様な瞳で俺を見つめる。
何だか・・・少女の行動が切なく思えた。
ちょっと前の自分をみているようで・・・・
少しでも傍にいたいと思う気持ちは痛いほどよく分かる・・・・・・・・でも・・・・・
決して受け止める事など出来ないのに・・・・・
「やっぱ・・・・・・だめ?・・・・」
難しい顔をして悩んでいる俺に少女は潤ませた瞳で最後のお願いをする。
そ・・・・・そんな顔で見ないでくれ・・・・・・・・・

顔を引きつらせながら少女のお願いに頷く事しか出来ない俺がいた。


その後ようやく少女に開放された俺はどうしようもない嫌悪感を胸に重い足取りで教室へと戻ってくると、なにやら教室内が騒がしい。
「・・・・・・・・・・?」
彼女の周りに人だかりが出来ているようだ。
手身近にいた男子生徒を捕まえて何事かと尋ねると、生徒は相手が俺だったことに少し怯(ひる)みながも彼女の方を指差し答えた。
「あ・・・・・・・・よしのちゃんが眼鏡を外してて・・・・・・・」

メガネ?
彼女が?
馬鹿な・・・・・・・・・。

彼女を人だかりの間から覗き見る。
そこには頬をぴんく色に染めて俯いている彼女の姿があった。
確かに彼女のトレードマークとも言える大きな眼鏡がその姿を消し、
彼女の整った顔立ちを惜しげなく際たたせていた。
俯いていることで、より一層存在感ある長いまつ毛。
夏休みが明けたばかりだというのに、日に焼けていない透き通るような白い肌。
小ぶりながら整っている目鼻立ち。
形のいい唇。
それは隣にいた姫島や京極と並んでも引けをとることはなく・・・・・・・
彼女は輝いていた。
眼鏡のない彼女の顔は免疫がないぶんどうしても見惚れてしまう。

呆(ほう)けている俺に彼女が気づき目が合った。
な、何か声を掛けなれれば!
『よく似合っている』とか、『いい感じだ』とか、皆が言っているように軽い感じで・・・・・

と、一瞬
彼女の顔が曇り俺から目をそらしてしまった。

そうだ。
そうだった。
彼女が俺に褒められて嬉しいわけがなかった。

俺は静かにその場を後にした。

まだだ。
まだ足りないんだ。
彼女の優しさに甘えてはいけない。
勘違いしてはいけない。
彼女に相応しい男になる為には、まだまだ足りない。
彼女に認めてもらえる・・・・・許してもらえるまで俺はもっともっと強くなる。




・・・・・・・・・・・・・・・・その時の俺は彼女の気持ちなんて想像も出来なくて、
結果やっぱり彼女を傷つけていた事に後でものすごく後悔することになる。


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