真っ白な文章 田島正理 著 飾り気も無く、誇張せず。神経が隅々まで行き渡って、読者に不快感を与えずスポンジが水を吸収するかのような著作が出来る技量を欲する。 難解な熟語の羅列で読者を戸惑わせず、極めて明白なる表現で、水が高いところから低いところへ流れるような、無理のない自然な文章を綴りたい。 そんな気持ち、一心で試案せれども、一向に良好な結果を得られずに、自分の文士としての才能の軽薄さにはいつもながら嫌気がさすばかり。 一心不乱に書き綴った作品も、一時の閃きを感じさせても、直ぐさま駄作に思えてしまう。 品格のある崇高なる文章を紡ぎ出した過去の文豪達の足元にも及ばぬ表現力が著しく欠落している私の文章。 芸術の粋を極めずとも、また燦然と光り輝くような比喩が無くても構わない。 読者の心を繋ぎ止める一句があれば、それで充分満足が出来ることだろう。 そんな真っ白い文章を私は書きたい。
雁字搦めで一点の隙もない文章よりも、例え間違いが有れども清く爽やかな、仄かに心に残るような文章を知りたくて、会得出来ない我が身の情けなさには甚だ迷惑という所。
小説と言う芸術の領域には未だ達せず、そればかりか小説そのものさえも、これっぽっちも理解出来ていない若輩者が、どれだけ頭を捻っても過去の天才諸氏には一笑に付されるような、軟弱極まりない私の文章がある。
雨が川の流れとなり、大海へ濯がれて、やがて大気と化し雨となるかの如き自然の摂理に背かぬように、不自然の一天にわかに かき曇る事もない境地への道は、嶮しく厳しい。
嘘をつかず、虚勢を張らず、無意味に飾りたてもしなくとも、燻し銀の芸を演じきれる潔さが欲しい。
そんな真っ白い文章を私は書きたい。
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