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作品名:デジャブー 作者:TheGuyBeginsToDo

第2回   第二章 謎のホームページ
お葬式の翌日、クラスはまるで何もなかったかのように静けさを取り戻していた。香織の机も片づけられた。いつものとおり、大森先生の国語の授業も、静かに時を進めていた。
わたしは、自分の香織への別れのメッセージの謎のことで頭がいっぱいだった。誰かが書いた・・?いや、違う。あれは間違いなくわたしの字だ。ユリから紙とペンを渡されたとき、ユリを含めて十人くらいのメッセージがあったから、その中の誰かがわたしの字をまねて書いたのか?・・まさか、いつもわたしの近くにいるユリが・・・いや、違う。ユリはそんないたずらをする子じゃない。あの時も自分のメッセージを書いて、真剣に香織の冥福を祈っていた。でも、あとのクラスメートのしわざとも思えない。どういうことだろう・・・・。
「田所さん!」大森先生が呼んだ。
「はいっ・・」授業にうわのそらだったわたしは、返事するのがせいいっぱいだった。冷や汗が背中をつたった。
「水谷さんのこと考えてたの?」
「いえ・・」
「早くいつものみんなに戻ることを水谷さんも望んでいると思うわ。授業に集中して」先生は優しく言った。クラスメート全員が先生の顔を見ていた。
「はい。すみません先生」


その日の放課後、図書室前の掲示板に試験の結果が張り出された。
結果を見たわたしは目をまるくした。自分の名前が十人ある名前の一番上にあるではないか!
いつもは自分の名前のところにあるはずの香織の名前がどこにもなかった。
香織もあの試験は受けていたから、本当は、彼女が一位で、わたしが二位ということか?それにしてもわたしが学年の上位に?信じられなかった。
わたしはこの試験の結果を例のサイトで占ったことを思い出した。
「誰もが信じられない結果になるであろう」・・・確かに信じられない結果だ。いや、試験の結果より、あの香織が自ら死んでしまったことの方が、今でも信じられない。
あれ?でも待てよ・・。確かわたしの試験結果は「ひどいものになる」じゃなかったっけ・・。

そこへユリが飛んできた。「佐智子!大変だよ」
「どうしたのユリ。それより見てよ!わたし一番になっちゃった!」
「もう知ってるよ。そのことで、クラスの何人かの携帯メールに「佐智子がカンニングした」って。みんな教室でさわいでるよ。わたしは、佐智子はそんなことしない!って言ったんだけど・・・」
「えっ?」

教室に戻った瞬間、それまで数人のクラスメートによる自分のうわさ話で騒がしかった教室が、水を打ったように静かになった。
「みんな、わたしカンニングなんかしてない!」
教室内に気まずい沈黙が流れた。
誰がこんなことを・・・。ユリが「大丈夫?」と優しく肩を抱いてくれた瞬間、あまりの悔しさに、我慢していた涙があふれた。

大森先生が教室に入ってきた。
「みんな!田所さんが本当にカンニングなんかすると思う?落ち着いて考えてみなさい!」
先生の言葉にみんな顔を伏せていた。
「佐智子、ごめんね・・・」
クラスメートが次々と佐智子に声をかけた。
「田所さん、先生の携帯にも同じメールが来てるのよ。ほら、これがみんなの携帯にも来てるみたいなの」
先生は携帯電話のディスプレーを見せてくれた。
「田所佐智子は試験問題を盗んだ・・そして解答の書いたメモを持って試験を受けた・・・」
「ひどい・・・・。先生、わたしは確かに試験問題のヤマをかけました。占いサイトでヤマかけのポイントが出てて・・・。でも、試験問題を盗んだりしてません!」
「言われなくてもわかってるわ。誰かのイタズラに違いない。それで、このメールの差出人、ほら見てみて。なんか記号みたいなものだけで名前らしいものはないけど、田所さん、心あたりはない?・・わよね・・これじゃ何のことだかさっぱり・・」
そこに書かれていたのは、XTYJJ76RQ・・・。


わたしは、大森先生に、最近自分に起こるようになったデジャブーのこと、占いサイトのこと、香織へのお別れのメッセージの謎のことを話した。
「今回の試験、正直言って実力以上の結果だわ。だってほとんどの教科が満点だったのよ。ヤマかけにしてもこれほどは当たるのは不思議というより不自然。そして、謎のカンニング疑惑メール。田所さんに起こる一連の事件・・・全てがつながっているかも知れないわね」先生はまるでミステリー小説でも読み始めたかのように、少しワクワクしているみたいだ。

「ねぇ田所さん、その占いサイトになんか秘密があるんじゃないの?」先生はいっそう目をキラキラさせて言った。
そういえば、初めてデジャブーを体験したあの夕食の時・・そうだ、お父さんが野菜スープを残さず食べなさいっていったあの時、確か初めてあの占いサイトを見たあとのことだった。
先生は話を止めて、急に首をかしげ、しばらく宙を見たかと思うと、夕暮れ時の誰もいない職員室の窓の外をじっと見つめていた。
「あっ・・・」
「先生・・どうしたの?」
「思い出したのよ!・・・水谷さんも最近占いサイトにこってたって言ってた」
「香織が?」
「彼女、パソコンクラブだったでしょ。わたしもクラブに顔を出してるから、その時・・亡くなる・・そうだなぁ一ヶ月くらい前に、ネット占いに夢中になって勉強時間がなくなっちゃうって話してた。うん、そうだ」
占いサイトを香織が・・・。どんなサイトだろう。もしかしたらあのサイトだろうか?いや、すごい数のサイトがあるし、決めつけるのは早い。
とにかく香織のパソコンを確認してみたい。何かわかるかも知れない。
「あらいやだ、もうこんな時間。田所さん、もう遅いわ。今日は帰りなさい。また二人で考えてみましょ」


「よくきてくださったわね」香織のお母さんはわたしとユリを香織の仏壇の部屋に案内してくれた。今日は土曜。ユリと二人お参りをさせてもらうために香織の家を訪れた。そして、お参りだけじゃなく、香織が例の占いサイトを見ていたのか、確認したい一心だった。
香織のお母さんもすっかり落ち着いた様子でわたしたちに話しかけた。
「あの子、友達の話なんかちっともしないもんだから、学校じゃいつもひとりですごしてるのかなって思ってたのよ。ところが、お葬式がすんでも、本当に多くのクラスメートの方がここへ来てくれて・・・。わたしもそのことが本当に心のささえになってるんですよ」この優しく穏やかな笑顔、悲しみを乗り越えた母親の顔なのだろうか。
「ただ、どうしても、あの子が、自ら命を絶った理由がわからなくて。それだけが残念なの。遺品を全部確認してみてみたけど、手紙とか日記とかもないし、お勉強の参考書とパソコンが部屋にあるだけで・・・。ごめんなさい・・あの子の運命だったのよねこれが・・・」母親の笑顔は、やはり曇った。

香織の母も、もちろんだが、わたしもクラスのみんなも香織が自殺したことを納得していない。
「あの、もし、よければ、香織が家出をしたときの置手紙を見せてもらえませんか?」
「佐智子!失礼だよ!」
止めるユリの言葉を振り切ってわたしはもう一度頼んだ。
わたしの真剣な顔をのぞいたあと「いいわ。ちょっと待っててね」と香織の母は静かに立ち上がり隣の部屋に出ていった。
「佐智子ったらまったく・・」
「知りたいのよユリ!香織の死にはなにか裏がある・・きっと」

香織の母から手渡された手紙には「わたしをさがさないでください」とだけ書いてある。手書きではなくパソコンで作ったものだ。これを作ったのは香織じゃない・・わたしはそう直感した。と同時に、あまりにシンプルな手紙に絶望していた。
これじゃなにもわからないか・・・。
手紙を手にとって見ていたユリが、目をパチパチさせている。そうしたかと思ったら手紙を目の十センチくらい前まで近づけながら「う・・ん・・何これ?」
とつぶやいた。
どうやら、紙の一番下の方に数ミリで書かれた文字があるようだ。とにかく小さくて読むのが大変だ。字ではなく記号のようなものが書かれている。
「あっこれ!」ユリが少し大きな声を出した。
「佐智子!これ・・佐智子のカンニング疑惑のメールの差出人!似てない?」
ユリの携帯にも着信したあのメールを表示させ、確かめてみた。「XTYJJ76RQ・・」間違いない!同じだ。
「どういうこと?」ユリが気味悪そうに声を出した。
「おばさん!もうひとつお願いがあります。香織のパソコンを見せてもらえませんか?最近、わたしの周りに起こるいろんな事件と香織の自殺が関係あるかも知れないんです。そして、香織のパソコンにその謎がかくされてるかも知れないんです」
香織の母は、わたしの言葉にたじろいで、しばらく考え込むような顔をした後、わたしの手を両手でにぎり、「田所さん、あの子の自殺の原因がわかるんだったら・・・。あなたにお任せします」と強い口調で言った。


ユリと二人で入った香織の部屋は思ったより広くて立派だ。香織の父は海外で活躍するエリート官僚であり、裕福な家庭の大切な一人娘の部屋だ。
ただ、あまり女の子らしいはなやかさはなく、かなりの数の書籍や勉強のための参考書で部屋はあふれている。
書籍の中には哲学書があったり、普通の中学二年生には難解なものもあるが、机の上の本立ての真ん中に、キチンと置いてあるのがキリスト教の聖書だ。
「彼女、クリスチャンだったんだ。秘密にしてたのかな」ユリが言った。
勉強ができるだけでなく、周りの人間にも心優しかった香織が、この聖書を、この机で読み、祈りを捧げていたに違いない。
机の右隣にデスクトップのパソコンが置いてある。
パソコンを立ち上げてみる。インターネットに接続し、ネット接続の履歴を見てみると、やっぱり・・・例の占いサイトがある。
アクセスしてみたが、自分のパソコンでやるのと何ら変わったところはない。
仕方なくわたしとユリは香織の家を後にした。


「佐智子、ちょっといいか」
帰宅した父が着替えもせずわたしの部屋の外で声をかけてきた。
「うん、いいよ」
「このメモが部屋の前に落ちてたぞ」
「あ!それ・・大事なものなの。返して!」
香織の置き手紙から書き写したXTYJJ76RQのメモ。
「なんだこれ?どっかで見たことがあるような・・」
「いいから、返して!」
わたしは父の手からメモをむしり取った。

父はわたしのベッドに腰かけ、優しく話しかけてきた。
「・・佐智子、最近お前の様子が変だって・・お母さんが心配してたぞ」
「なんでもない。大丈夫だから」
「クラスメートのこと聞いたよ。友達を亡くしたんだ。少し変になっても仕方ないさ」
「心配かけてごめんなさい。でも本当に大丈夫だから・・・」
「そうか、わかった・・ならいいけど。困ったことがあったら、必ずお父さんに言うんだぞ。わかったな佐智子。お父さんお前を信じてるからな」
「うん・・」
父は、わたしが机に置いた折り畳んだメモをじっと見ながら腰を上げ、部屋から出て行こうとしていた。
そうだ!
「お父さん、待って!」
メモを広げ父に見せながら聞いた。
「さっき、これをどこかで見たことあるっていってたよね」
「ああ、どこかでな」
父はメモを見て考え始めたかと思ったら、すぐ考えるのをやめ、わたしを見つめ、聞いてきた。
「そもそも、このメモはなんなんだ。佐智子」
「ごめん・・・今はまだ言いたくない」
父によけいな心配かけ、この先の謎の究明を止められるような気がして、そう応えていた。
「そうか・・」心配そうな父の顔を見て少し胸が痛んだ。
父は再びメモを見つめ、しかめ面をしたかと思ったら、すぐ明るい表情に変わった。
「ああそうか、会社のパソコンのパスワードに似てるなこれ・・・」
パスワード・・そうか!パソコンで使う何かのパスワードだったんだ。

部屋から父が出ていくやいなや、あわててパソコンのスイッチを入れた。
ネットに接続し「占いスタート」のボタンを押す。
いつもと同じ、ただの占いコーナーがあるだけで、何も変わったところはない。
「ただの占いコーナーだ・・・パスワードを入れるとこなんて、どこにもない」声を出した後、目を閉じて首をぐるぐる回した。
そのコーナーのページを閉じると、これもいつもと同じだが、不思議な一枚の絵が出てくる。
夕暮れ時の古い教会の絵・・・わたしはこの絵を見るのが何となく好きだった。見れば見るほど、心がどんどん軽くなって・・・。
おっと、調べなきゃ・・・。

何気なく絵の中の教会の十字架にマウスポインタをあててみたら・・・。
あれ?ここクリックできる!初めて気づいた。クリックしてみた。
するとページが変わり、英語だろうか・・・「イエスズビレッジのホームページ」と書いてあるようだ。イエスズってイエスキリストのことかな・・・・。そのすぐ下に書かれているのが「メシア復活の日」・・・・。「メシア」は確か救世主のことだ。あとは・・えっと・・「時間と記憶の操作・・・?」直訳するとこうなるけど、いったいなんのことだろう?
英語には少々自信があるが、あとはほとんどわからない。
次の画面は・・
なにこれ?英字で書かれた人の名前みたいだけど、随分ある。ざっと二百はありそうだ。外国人に混じって日本人らしい名前もあるが、詰めるように並んでいる無機質な文字の羅列が不気味だ。画面の上から下へ順に視線を移したわたしは、下から三行目で目を止めた。
「M.kaori・・・」これってもしかしたら香織のことじゃ・・・。
不気味な名簿の二ページ目を見て、更にある名前が目に飛び込んできた。
「T.sachiko・・・・」

その時、けたたましく鳴る携帯の着メロに心臓が止まりそうになった。
大森先生からだ。
「田所さん、例の携帯メールの差出人、調べたらいろいろわかったわよ。他の学校の先生、わたしと同じパソコンクラブの顧問の先生なんだけど、その人にいろいろ聞いたら、あの記号の意味がわかったの。あれはパスワードだったのよ。その先生、オカルトとか超常現象のホームページにも詳しくてね。あるキリスト教に関係のある団体のホームページがあるらしくて、それが、あなたがよく見る占いサイトとも関係あるみたいなの。あの記号は、そこで使うための秘密のパスワードらしいの。
ただ、よくきいて、田所さん。そのサイトには「救世主復活のために人間を犠牲にせよ」というようなことが書いてあるらしく、とても危険なサイトじゃないかって。
もしかしたら、水谷さんもそのサイトを見てて、何かの事件に巻き込まれたかも知れない。だからいい?決して一人でアクセスしちゃだめ!先生と一緒にやるのよ!わかった?」
その時、パソコンの画面が動き始めた!
「田所さん!どうしたの?なぜ返事しないの?」
パソコンのディスプレーが煌々と光った。
まぶしさに我慢できず、目を閉じた・・。
はっ!わたしの後に誰かいる・・・。怖くて体が動かない!声も出ない!

「田所さん・・・」香織がいた。


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