雨は絶え間なく降り注ぐ。 黒い人の波は雨の中もひたすら列を作り続け・・・・。 私は一人列から外れ涙を浮かべ続けた。 並ぶ列に浮かぶ涙は悲しみ?悔やみ?後悔?みんな同じ気持ちではないことは私が一番わかっていた。 私の親友は自殺をした、私はたった一人の親友さえも守れないのだと悟った。 死んだ彼女の母は私のほうを見て軽くお辞儀をする。 私には耐えられなかった・・・私が。私さえ・・・しっかりしていれば起こり得なかった未来。 そんないくつもの未来の中から私は最悪の未来を呼んでしまった。 雨が強くなる中、私は傘も差さず駆け出す。 この場所には居たくない。彼女の死をここのいる全員が悲しんでいるわけではないからだ。 責任を問われここにいる学校関係者、彼女の死の原因となった者たち。 偽善だけでここにいる者たち、私はその全てが許せなかった。 そして私自身も許せなかった。
酷く濡れた制服のまま私は部屋へと上がる。 母は私を気遣ってか、あえて声を掛けなかった。私にとってはとてもありがたかった。 今の私は自分の母でさえ、偽善を語れば決して憎まない保障ができなかったからだ。 濡れたままの制服でベットに潜り込む。 私は彼女の居ない明日を受け入れられなかった。
私の体は浮いている。 下には黒の列が見えるだけ。それが私の葬儀だと気づき、「私は死んだのだ」、そのとき初めて実感した。 私の体は私の意志とは関係なくその浮力を失い落ちていく。 私の目の前には笑顔が似合う優しい母が泣き崩れ、顔を上げられないほどになっていた。 それを支えるように立つ父は以前の逞しさは欠け別人のように思える。 私には耐えられない。 逃げ出そうにも体は自由を奪われたように動かない。 ふと私の肩に手がかかった。 「最近の奴はやっぱ勘違いしてる奴が多くてやだね。死んだらそれまでってのは生きてる奴らだけの考えだからな。楽になれるわけじゃない、死の理由が何であれ定められたとき以外に死んだ奴はその分責任をとらなきゃいけない。」 愚痴っぽい台詞を後ろからかけられ私は振り向く。 今度は体の自由が利く。ただし振り向くとき、鉄が擦れあう嫌な音が起きる。 そこには真っ黒な影だけのヒトガタがいる、決して人ではない、顔すらないのだから。 「たすけ・・・・」助けを求めた・・が黒い彼が何かを引っ張る。 そのとき私は始めて気づいた、鉄の擦れる音は私へと繋がれた鎖なのだと。 「すまないけど、これは決まりでね。僕の話を聞いてももらわないといけないんだよ。」 黒い彼が鎖を引っ張ると私の体は縛られ声すらもだせなくなる。 「定められた時ってのは自分の意思以外で死んじゃったときのことね。たとえば事故死とか寿命とかさ。自殺ってのは特別枠が在ってね、自殺の時は本来自分が死ぬべき時間まで自殺した時間から責任をとらなきゃいけないんだよ。君の場合はxxxx年x月xx日までだね。そろそろ君の質問には答えないといけないからしゃべれるようにするよ。」 鎖は緩み私の自由が利くようになる。 「お願い助けて!!もういや!!なんで!!なんで死んでまでこんな!!」 黒の彼は再び鎖をきつく引っ張り彼女の自由を奪う。 「ふぅ。まだ繋がってたか、君も運がいいね。今回は君が被害者ってことで特別優しい僕が引き止めてあげたけど、一つ言っとくな!」 いままで黒の彼はふざけた口調だったのが変わり最期の一言はキツイ言葉を言う。 「この鎖は俺からは決して切ることができない。切ることができるのは君だけだでもな。これだけは覚悟しとけ!鎖の切れた魂は世界を彷徨う、そしてその魂は自分と自分以外の悪意さえかき集め、君たちで言う悪霊ってのになっちまうんだよ!!」 真っ黒な彼の少し悲しい感じが私に伝わる、真っ黒な影だけのはずが少しづつ人間っぽさを作り出す。 「分かってもらえればそれでいい。」 落ち着きを取り戻しつつ在った私を見て彼は再び鎖を緩める。 「今度こそ質問にこたえるさ。君しだいだけどね」 やっと平常心とは言えないけど落ち着いた私は彼へと問う。 「あなたは・・死神・・?なの?」 私の質問に彼はさもよくある質問だと言わんばかりに口を開く。 「君の言う死神かって言われるとそれは分からないけど君が信じたいように思ってもらえばいいと思うぞ。 大体生きてた奴の知ってる知識なんて死じまえば何の役にも立たないし、真実とは程遠いからな。」 次の質問は?っといった感じに彼は腰に手を当てる。 「私がしなきゃいけない責任って何なんですか?・・・・」 この質問にも彼はよくある質問その2といった感じに答える。 「簡単に言えば君の死によって変わった世界の運命を見取らなきゃいけない。その他は追々教えるとするさ。」 いつもならこれで質問が終わるのを何度も経験していた黒い彼は彼女を次のステップに進めるために彼女の両親のほうへ進もうとする。 「あの・・もう一つだけ質問してもいいですか?・・・」 黒の彼は珍しそうに「かまわないよ」と言った。 「あなたの名前・・・・教えてもらいたいです」 黒の彼はあきれたようなポーズをとる。 「名前なんて意味ないじゃないか、ここは君が生きていた世界とは違うんだがらな」 私はそれでも彼の名前をどうしても聞きたくなった。 「私は未来って言うんです。」 名前を聞くなら先ず自分の名前を教えるべきだと気づき自己紹介をする。 「あぁ知ってるよ安藤未来。高等部2年好きな男子が一名いたようだね。それ以外は特に変わったことないようだし、まぁ苛めを受けてたぐらいかな?俺を誰だと思ってるんだ?君以上に君の事や君の世界のことはしってる。」 さもくだらない事を聞くなっていった感じで答える。 それでも私はあきらめず彼の名前を聞こうとすると彼はさっさと次に進めるために答えてくれた。 「名前はない。そんなものに意味もない。君が呼びたい様に呼んでくれればいい。」 私は悲しくなった、自己を意識するのにおいて自分の名前はとても大事なことだから・・・・。 「それじゃ私が名前を付けてあげる。四季ってよばせてもらっていい?」 黒の彼は苦笑いしながら笑う。 「うまいな君は。死期か俺にはお似合いな名前だな。そう君の死の時期をつかさどるものだからな。」 勘違いした彼に私は慌てながら訂正した。 「ちっ・違う!その死期じゃない!わたしの言ったのは春夏秋冬の四季よ!あなたに時間の感覚があるかわ分からないけど。いつも私達を見てくれているから・・だからそう付けたかったの。」 黒の彼はちょっと恥ずかしい名前の理由と勘違いを誤魔化しているかのように口早に言う。 「好きにしてくれ」 私は改めて彼へと言った。 「四季・・これからどうなるかわからないけど・・・よろしくね・・。」 その問いに四季は「あぁ」と答えてくれた。
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