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作品名:Space 作者:うさぎ

第9回   9
「えっ何!どうしたの?何か忘れ物?!」
突然自分に向って逆走し始めた吉岡にそう問いかけようとしたその瞬間、
吉岡は歩道の真ん中でまゆみをいきなり抱きしめた。
驚いたのはまゆみ本人ばかりでない。

たまたまそこを通りかかった人達からも
「おぉ〜!!」と驚きの声が一斉に上がった。
木元も又「えっ!うそだろ!あの保安、何考えてんだろう!
こんな道の真ん中で。なっ!原田?!」

原田はたった今自分の目の前で起きた事態に
自分が全く対応していない事を感じていた。
なので木元の問いかけにも、返事が出来なかった。
もちろん一番慌てたのは抱きつかれたまゆみ本人だった。
ましてここは地元。幾ら夜だとはいえ、誰の目があるか分からない。
すぐに気を取り直し
「吉岡さんどうしたの?皆驚いて見てるよ!」
まゆみは吉岡の体を自分から引き離しながら言葉をかけた。
「皆が見てる前の方が自分の思いがまゆみさんに伝わるかなって。
それにまだ離れたくなかったし・・・」
「今夜はかなり飲んじゃったから・・・
それに今離れても、又会えるから、ホラ!青になったよ、さっ行かないと。」
まゆみは子供を諭すように吉岡に優しく告げた。
「おやすみなさい」
吉岡は素直にそうつぶやくと足早に交差点を走り抜け、駅の方へと消えて行った。

残されたまゆみの目からは見る見るうちに涙があふれ出てきた。
それは他人からは、吉岡と別れた寂しさの涙か、
それともあんな若い男性に抱きつかれた嬉し涙なんだろうとしか映っていなかったが
決してそうではなかった。

その涙の意味に気がついていたのは、
その一部始終を目の当たりにしていた原田だけだった。

まゆみは泣きながら、原田と木元の前を二人だと気が付かずに横切り走り抜けた。
まゆみの涙に気が付いた木元は
「今あの人泣いてたよな?あれってやっぱりさ、うれし涙だよな?
それとも離れるのがよっぽど嫌だったっとか?なっ原田?」
「どっちも違うんじゃない?じゃあ又明日。」
原田はそう言い放すと木元と別れ、急いでまゆみの走って行った方へ走り出した。

緒方さんきっと後悔して自分を責めてる・・・
原田にはまゆみの涙は後悔の涙だということが分かっていた。、
あの保安の人があそこまで気持ちを伝えてきたのは自分の
態度が原因だって思ってるんだろうなきっと・・・
まゆみを追いかけながら今のまゆみの心の中を読んでいた。

まゆみが走って行った先には原田の住んでいるマンションがあった。
まゆみは4階のまだ明かりのついていない原田の部屋を見上げると、
そのままマンションの横を走り抜けた。
その様子を後ろから追いかけて走っていた原田は
どこに行く気だろう・・・その先は線路にまたがる橋なのに・・・
原田に嫌な予感が過ぎる彼はスピードを上げ更に追いかけた。
それでも、まゆみの姿を見失った。
原田は線路に架かる橋の上から恐る恐る下を覗き込んだ。


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