吉岡がバイクを止めたのはレインボーブリッジが一望できる小高い丘の上だった。 「いい所でしょう?僕もバイクで良くここに来るんです。 ここからの夜景は何時間見てても飽きないんですよね。」
吉岡はまゆみもきっとこの場所を気に入ってくれると思っていたのだったが まゆみの様子が少しおかしい事に気がついた。 「まゆみさん?どうかしましたか?」 「えっ!いいえ、いいところですね。ほんとレインボーブリッジが綺麗!」 まゆみはどこか気持ちの入っていない言葉を彼に返していた。 「レインボーブリッジは好きじゃなかったですか?」 吉岡は尚もまゆみの様子が気になり更に突っ込んで聞いてきた。 「いえ、私もこの夜景は好きでした。この前までは・・・」 「この前まで?」 この前までは好きだったのに今は・・何故?
吉岡はこれ以上聞いてはいけないと察したが気持は、その思いを超えて言葉が先に口を突いて出ていた。 「嫌いになる何かがあったって事ですか?」 「・・・・・」 まゆみは何も答えず無言だった。
正直に答えられる事ではなかったのと、 この事は僕と自分の二人だけの秘密にしておきたかったからだ。 何も答えないまゆみに吉岡は頭を下げた。 「すいません。余計なことを聞いてしまったみたいで・・・」 まゆみは慌てて自分を取り戻し、幾らか微笑みも浮かべながら
「本当にここはいい所ですね。こういういい場所は人に教えたりしない方が いいんじゃないんですか。一人で大事にしまっておかないと・・・」 「そうですね、これからはそうします。 さっそろそろバイクを置いて食事に行きましょうか?」 「はい!」 二人は再びバイクにまたがりまゆみの自宅に向かった。 まゆみはバイクを自宅近くに置くと、二人は近所のお店へ食事に向かった。
吉岡は酔った勢いでさっきからずっと気になっていたレインボーブリッジの話を 再びまゆみに切り出してみた。 「まゆみさん?さっきのレインボーブリッジの話ですけど・・・」 「さっきのレインボーブリッジ?」 まゆみは吉岡がさっきの事をずっと気にしていた事に改めて気づいた。
「そんなに気になるの?」 まゆみは吉岡に尋ねた。 「はい!どうしても気になって仕方ないんです。」 「あの場所で恋人と別れ話をしたとか?」 「え〜〜別れ話?」 まゆみは思わず噴出しそうになった。 「違うんですか?」 「そんな凄い話じゃないんだけど・・・ 聴いたところで何だそんな事?っていう程度の話だから。」 「そんな事でも聞きたいです。」 「え〜〜〜・・・・」 吉岡はお酒の力もかなり借りて、更に 「困った人間ですいません。でも聞かないと。今夜眠れなくなりそうだから・・・」 「え〜〜そんなおおごとになっちゃうの?」 「はいおおごとです」と笑いながら答えた 「じゃあ少しだけね。」 「はい少しだけ。」 「初めて一緒にランチに行った時、辛い別れがあったってお話ししましたよね。 私はまだその子の事を忘れられないというか。 何かその子に関連したことがあるとその子の事を思い出して辛くなるんです。 あの場所もその一つなんです。だから・・・」
まゆみは過去に僕を連れてここへ来た事があった。 東京に出て来た彼がどこも見た事が無く殆ど毎日会社と学校の往復だけで、 休みも家にこもったまま滅多に家から出ない生活を送ってると聞かされ、 まゆみは気分転換にでもなればと思い、休みの日には、 「折角東京に出てきたのに、何処も見ないなんて」と 彼を半ば無理やり外へと引っ張り出していた。
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