その日、仕事が終わり出口に向かって歩いていたまゆみは 不意に課長に呼び止められた。 「緒方さん、ちょっと時間あるかな?」 「はい、何でしょう」 「んんそのあれなんだけど・・・」 「はぁ」課長はいかにも言い出しずらそうな雰囲気でまゆみの顔を見た。 まゆみは咄嗟に「もしかして・・・リストラ・・・」 もしそれが当ってしまったら子共二人を抱えて路頭に迷う事になりかねない ・・・それだけは・・・まゆみは恐る恐る課長に尋ねてみた 「課長お話って?」 「あ〜実は転勤の話があるんだけど・・・」 「えっ転勤ですか?」 「そうなんだよ。水戸の店舗の方なんだけど、どうかな?」 「どうかなって課長今の今でお返事しないといけないですか?」 「いや!そんな事はないよ。君は二人の子供さんが居るんだったよな、 まあよく考えてなるべく早く返事のほうを頼むよ」 「分かりました」 まゆみは取り合えずリストラではなかった事にホッと胸をなで下ろした。
僕から離れようと思った時に転勤の話が舞い来むなんて、 これも離れなさいという暗示なのか・・・ 取り合えず返事は子供次第だと家に急いだ 夕食をとりながら子供達にその話しをしてみた 二人の子供は揃って二人が二人とも一緒に行くとは言わなかった。 何となくそう言うだろうとまゆみ本人も覚悟はしていた。 上の男の子は来春料理の専門学校へ入学する。 料理の腕は私なんかよりずっと上だし、掃除も洗濯も時には繕い物ですら何なりと こなしてしまう。この子のおかげで私はどれだけ助かったことか・・・ 下の高校2年の娘は来年大学を目指し受験体制に入る。 二人とも親なんか大して必要としていない。 娘に至っては母親より仲の良い兄さえ自分の傍にいてくれればそれでいいっていう子なのだ。昔から二人は大の仲良しで。娘にとって兄は父親であり兄であり恋人代わりのようでもあった。二人はこのままここで二人で暮らすと決めた。 まゆみは自分で自分の行き先の決断を迫られた 迷ったところで、断れば今の会社に居ずらくなる。 それだけははっきりしている事実だった。 まゆみは翌日課長に転勤の話を受けると伝えた 但し一つだけ条件をのんでもらう事にしだ。
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