神様!!なぜこの子を私の子供としてこの世に誕生させてくれなかったのでしょうか! 私の子なら、自分の子なら、さっきだって、死にたかったって言った時、 思い切り頬をたたけたのに・・・ 今だってこの子を思い切り抱きしめることができたのに・・・ まゆみは声に出してそう叫んでしまいたかった 胸も悲鳴を上げそうなくらい締め付けられて苦しかった・・・
そんなまゆみの苦しい想いなど気付くはずもない吉岡は 「メルアドも電話番号も消しちゃったんですか・・・・でも大丈夫ですよね! だって僕がメールと電話すれば良いんだから!緒方さん又登録し直してください」 何言ってんだかこの子は・・・ まゆみの泣き顔から笑がこぼれた。 「僕、もういい、無理しなくていいから。 そんなに私に気を使わなくても大丈夫。 さっきの言葉が僕の本音なんだと思う。だから・・・」 「緒方さん?」 「私は僕からのメールも電話も拒否に設定しちゃうから、登録しないよ」 「えっ、緒方さんほんとにごめんなさい」 「何で僕が誤るの?僕何も悪い事なんかしてないじゃない。 自分の素直な気持ちを私にぶつけただけでしょ?! いいからもう病室に戻りなさい。私も帰るから、じゃあね」 まゆみは振り向く事もなくバス停を離れた。
一人その場に取り残された原田はしばし呆然と立ちすくんでいた 「僕が傷つけた・・・自分の事だけしか考えられなかったから・・・・ 自分の事で一杯一杯だったんだ・・・でも・・・」 原田はたどたどしい足取りで病院に向い歩いて行った。 病室に戻った原田はベッドに体を横たえると、自然と涙が毀れてきていた。
「コンコン!」 ノックの後に吉岡が入ってきた。 「ちゃんと誤って許してもらったのか?」 「いえ!だめでした・・・・」 「オイオイ!僕、泣いてるのか?どうした?何があったんだよ!」 「緒方さん、もう僕には関わらないってメルアドも電話番号も消したって・・・ 僕本当に緒方さんの事傷つけた・・・」 原田は頭から布団をかぶって泣き始めた。 「許してもらえなかったって事か・・・そんなことあるかな・・・ 彼女がお前を許せないなんて事ほんとにあるのかな?」 「どういうこと?」 「何か他の理由があるんじゃないのかな・・・」 「何ですかそのほかの理由って?」 「そんな事俺に聞いても分かるわけないだろう?」 「そうなのかな・・・」 「多分な・・・」 「僕、彼女と別れたんです。別れたって言うか・・・失ったっていうか・・・」 「で、緒方さんも同時に失ったんだ」 「・・・そうなんですね・・・」 原田の言葉は尻つぼみに小さくなってしまった。 「じゃあ俺行くから」 「・・・はい」 吉岡は病室を出ると病室の外に深雪が立っていた。 「深雪どうした?」 「お兄ちゃん何処行ってたの?ここの人、知り合いなの?」 「ん?あぁちょっとな」 「ふ〜ん。そうなんだ・・・」 深雪は部屋の前にかかっていた名前に目をやった 「原田 哲也・・・」 吉岡が深雪の病室を後にして家に帰ってからのことだった。 原田の部屋を誰かがノックした。
「緒方さん・・・」原田はまゆみが戻って来てくれたのかと思い 「はいどうぞ」と明るい声で返事をした 「こんばんは」 見た事もない顔色の悪い、いかにもどこか病んでいると言わんばかりの女性が 自分のベッドの方へ歩み寄ってきた。 手首に巻かれた包帯が何を意味するのか、原田にもすぐに理解できた 「どなたですか?」 原田は恐る恐る尋ねてみた 「突然すいません。私隣の病室の者なんですけど・・・ 昼間この部屋からお兄ちゃんが出て来たのを見たんで・・・」 「お兄ちゃん?って?」 「あっ吉岡、吉岡勝の事です」 原田は事の次第が少しづつだが読めてきた 「あなた、お兄ちゃんの知り合いなんですよね」 「知り合いって言うほどの知り合いじゃないですけど・・・」 「貴方はお兄ちゃんの好きな人ってどんな人だか知りませんか?」 この言葉から原田は全てを理解した。 この人が吉岡さんを訪ねて来た人なんだ。 緒方さんがその場を旨く取りつくろったっていう・・・ 「いえ!僕はそこまで吉岡さんと親しい訳ではないんで」 この人が緒方さんの事を知ってしまった時 一体どんなことが起きるんだろう・・・ 原田は想像しただけで恐ろしいと感じたのだった。
諦めたのか深雪は黙って原田の病室を出て行った。 翌日原田は無事に退院し自宅に戻った。 退院した事をまゆみ知らせるためメールを送った。がまゆみが昨日言っていた通り自分が送ったメールは自分の元に戻ってきてしまった。電話もかけてみたがやはりまゆみには繋がらなかった。
まゆみの方は幾ら辛いからといってまさか仕事を休む理由にはならず 僕の事はもう心配しない。僕の事はもう終わったんだ。僕にもう私は必要ない。 いろいろな言葉で頭と心を一杯にし、 何とか僕から気持ちを切り離そうともがいていた。
仕事に追われている時は何とか頭の中から僕の事を排除できていたが ふとした瞬間一気に僕への想いが湧き上がってくるのだった。 「あれからちゃんと病室にもどっただろうか 退院はいつだろうか?家に戻ったら又酒を浴びるように飲んだりしてないだろうか 今度はちゃんと食事を取ってくれるのだろうか・・・」 心配してはいけないと思いつつ原田の事が頭を過ぎる。
でも、もう離れなければ、今度こそ本当に離れなければ、 いつも自分が心配している事が彼の足かせと重石になりかねない 一人で乗り越えなければ大人になどなれない 私が目の前の障害物をどけ、倒れては手を貸し、 怪我をしたら、キズ薬をぬる そんな状態が彼にとっていいわけが無い! 深い愛情は重いだけで、本人には何の役にも立たない 彼から離れる事が僕への最後の愛情なのだから・・・
私は大丈夫、今は僕から病室で言われた言葉が少し辛いけど 私の心の中には僕のスペースがちゃんとある!! 誰も入ることの無い僕だけのスペースが・・・
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