深雪の部屋からは長い間泣き声が聞こえていた。 聞こえるように業と大泣きしているのか その心理までは図り知る事はできなかったが 取り合えず吉岡はその場を離れることにした。
歩いて駅まで向う途中、友人の豊田に電話をかけてみた。 今夜の出来事を聞いてもらいたかったのと できれば一晩厄介になりたかったからだった。 「はい!豊田・・・あ〜吉岡。どうした?」 「さっき深雪に話ししたんだ。今からそっち行っても良いかな?」 「あっそうなんだ。話し、したんだ・・・ごめん。今日はだめなんだ。今から彼女と会う約束してるんだ。お前が今夜彼女に話すって知ってたら彼女と約束なんかしなかったんだけど・・・、」 「そっか出かけるとこか・・・いや!いいんだ。じゃあまた」 この日は土曜日だった。週末の繁華街はどこもカップルで溢れかえっていた。 何処へ行く当ても無かったがこのまま家に戻る気もしなかった吉岡は、 まゆみの住む街へと足を運んでいた。
いつかの喫茶店がまだ開いていた。 吉岡はそこでビールを注文すると、まゆみにメールを打ち始めた。 「こんばんは。今緒方さんと初めてランチをした喫茶店に一人で来ています。閉店までここに居るので良かったら来てもらえませんか」 送信ボタンの上に指を置いたが中々押す勇気がでなかった。 吉岡は一旦携帯をテーブルの上に置き、暫く時間をあけることにした
家で原田からのメールを待ち続けていたまゆみは、自分からメールをしたい気持ちを必死に堪えていた。僕が私に何も言ってこないのは、前回みたいに二人で地獄に巻き込まれたくないんだきっと・・・ 本当は人一倍自分の心の中を覗かれたくない僕は 今回はじっと一人でこらえたいって思っているから・・・
もともと世話焼きのまゆみには今の原田の状態が気になって気になって仕方がない そんな気持ちを何とか紛らわそうと、遅い時間にも関わらずキッチンや風呂場の掃除に没頭していた。
この時点で原田が心配していた通り、まゆみの生活を完全に脅かし 彼女の生活リズムは、完全に原田のことだけになってしまっていた。
「こんなに夜遅く、まして暮れでもないのに何でそんなに必死に掃除してんの?」 息子が不思議に思ったのか声をかけてきた。 「えっ別に、何でもないよ。大掃除しなくてもいいように 今からやっておこうかな何て思ってるだけ・・・」 自分でも何だかよく分からない答えが口を突いて出ていた。 「あっそ!どうでもいいけど、もう寝るからあんまりガタガタしないでくんない?」 「はいはい!静かにね・・・お母さんも、もうこれで辞めるから・・・」 そんな時だったまゆみの携帯がメールの受信を知らせてきた
「あっ僕!」メールの相手が原田だと信じきっていたまゆみは、着メロが吉岡の着メロだということにも全く気付かず、原田から送られてきたメールだと思い込んだまま文章に目を通していた。 「喫茶店?!」まゆみは子供達に気付かれないように慌てて身支度を済ませ家を出た。
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