まゆみは仕事に行くまで、時間の許す限り原田の為に時間を費やした。 食べられそうな物を買ってきて冷蔵庫に詰め込み、 朝食の支度もし汗で汚れたTシャツを洗濯したりと目一杯動き回っていた。 一区切りしたとこで、時計を見るともうそろそろマンションを出ないと間に合わない時間になっていた。 「僕!私そろそろ仕事行かないといけないから。僕一人で大丈夫?」 「すいません。殆ど寝てないですよね。緒方さん大丈夫?」 「全く寝てないわけじゃないし、今日はそんなに忙しくないよ多分。」 「また、多分ですか・・・?」 「あははは・・・まぁそう突っ込まないの! じゃあ僕私行くからね。何かあったら電話してね。」 「はい。でも、もう大丈夫ですから」 「今日学校はどうするの?行くの?」 「はい多分!」 「多分ね。」 二人で大笑いした後まゆみは急いで仕事場へと向った。
仕事場に着いたまゆみは、携帯を仕事中も肌身離さず持っていたが、 原田からの連絡はなかった。 夕方になりそろそろ僕が学校に向う時間だと思ったまゆみは 僕にメールを送ろうと文章を打ち始めた時だった。 僕の方から先にメールが届いた。
「緒方さんお世話になりました。さっき熱を測ったら36度5分でした。 だからもう大丈夫です。今日の講義は休めないのでこれから支度をして行って来ます。 緒方さんも余り無理しないでくださいね。」 まったくこの子は、私が心配してメールをしてくるだろってって分かっていて ちゃんと自分からメールを送ってくる。 この辺がまゆみにとって原田が可愛くて仕方の無いところだった。
その日の仕事を終えると、いつものように裏口へ向った。手荷物の検査を終え、 まゆみは帰路につこうと歩き出した時、まゆみの横にスーッと1台の車が近づき真横にピタッと止まると、運転席の窓が静かに下がった。 運転していた男性がまゆみに向って声をかけてきた。 「まゆみさん!お疲れ様です。」 「えっ?」 声をかけてきたのは吉岡だった。 「吉岡さん!どうしたの?」 「僕今日休みだったんで、友達から車借りてきました。 これから少し付き合ってもらえませんか?」 「これから?」 「だめですか?」 まゆみは夕べも殆ど寝ていなかったし、 その理由を吉岡に聞かれても答える事はできないしと 返事に少し戸惑っていると吉岡は車をから降りると助手席のドアを開け 「さっまゆみさん乗ってください」と急かした。 その時後方ら迫ってきた一台の車が勢いよくクラクションを鳴らしてきた。 こんな狭い道でいつまでも車を止めて置くことも出来ず まゆみはせかされるまま仕方なく車に乗り込んだ。 「無理に誘ったりしてすいませんでした。」 「・・・・」 まゆみはここまで強引に自分に近づいてくる吉岡の本当の心理が分からなくなっていた。年だって自分の方がはるかに上だし吉岡はルックスも良くそんな青年が自分に本気だとはどうしても信じられなかったのだ。
まゆみは離婚をしているだけに、人に裏切られるのを何よりも恐れていた。
誰かと、年増女を何日で本気にさせるか賭けているとか、 女をその気にさせて一気に振るのを生きがいにしているとか、 きっと私が本気になったら何かが起こる。 そんな悪い事ばかりが頭をよぎる まさか、まゆみがそんな事を考えているなんて爪の先程も考えていない吉岡は、 まゆみに昨日の交差点での出来事を再び謝ってきた。 まゆみはやっと吉岡に口を利いた。 「吉岡さん酔っていたから、気にしていません。まさかそれを言いにわざわざ?」 「いえ!それだけでもないんですけど・・ 夕べその後に送ったメールに何の返事もなかったから・・・ まゆみさん怒っているのかと・・」 「あっごめんなさい。昨日携帯の音消したまま朝になってしまって・・・ 別に怒ってるとか言うことはなかったんですけど、正直驚きました。」 まゆみは咄嗟に嘘をついてしまった。
まさか原田の所に一晩泊まって看病していたとは言えなかったのだ。 それにしても私は僕と知り合ってからというもの 嘘をつく事がとても多くなってしまったと、自己嫌悪に近いものを感じていた。
「すいません。自分の気持ちを表すのに1番いい気がしてたんです。 多少お酒の力もありますけど、ほんとにすいません」 まゆみは何て答えていいのか分からなかった。
自分の中で愛しているのはこの世で3人。 2人の子供と僕の3人だけ・・・今までもずっとこの先も・・・ 今もその気持ちに何も変わりはなかった。
会話が途切れたほんの少しの時間にまゆみはスーと眠りに引き込まれてしまった。 その間吉岡は車を止めるとまゆみが起きてしまいそうな気がして、 行く当ても無く夜の都会をただ車を走らせていた。
どの位眠ってしまったのか、まゆみはハッと我に帰り 「あっ私、眠ってしまって・・・・ごめんなさい。ここは?」 「いえ!別にどこということは無いんですけど 何処か行きたいとこでもありますか?」 「あの・・ゆっくりお話しませんか?」
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