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作品名:視線の行き先 作者:ブラジル先生

第3回   フジモリ
ふざけんな!!

藤森は怒っていた。
ハルナの手を引いたまま、一直線に自分のアパートへと向かう。

ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!

一体何に対する怒りなのか、どこへ向かっている感情なのか、
自分でも分からなくて対処に困っていたのだが、これだけは分かった。


この女は、無かった事にして忘れてしまおうと思っているのだ。
昨夜の事を。

このまま何事もなく部屋へ戻って、何事もなく会社へ出社して。
藤森の事を忘れてしまおうと思っているのだ。


ふざけんなーっ!!!

ムカーッ!



藤森は話すことは得意ではなかった。
正直言って、昔、そのせいで女に振られたことは数知れない。
そういえば、昨夜も、大事な事は全然何にも言っていなかった気がする。
でも。

むかついてしょうがなかった。
悲しくてしょうがなかった。
悲しい事が全然伝わっていないんだという事実が、ムカついて仕方がなかった。

何にも知らない顔をして、
目の前の藤森の事なんて、まったく眼中にいれないで、
バッサバッサと刃を振り回し、無造作に、無神経に、周囲を切り裂いている彼女に
ただ、無意味に、巻き込まれて傷ついているのだ。藤森は。

一方的にも程がある!


藤森の、傷だらけの心臓を、
今すぐ胸から取り出して、
彼女に見せてあげられればいい

藤森は思った。


そうすれば、分かる。

何故、こんなにムカついているのかも・・・・



いつからか

藤森が、ハルナから、目が離せなくなっていたのも・・・




・・・それなのに!


無かった事になんか、されてたまるか!


確認するように、つかんだ手に力を込める。
ハルナの手は小さくて、やわらかくて、
一瞬、潰してしまうんじゃないかと、怯んでしまいそうになったが。

馬鹿にすんなよ
奥歯がギリっと鳴った。




手は、離さない。





帰す気なんか、毛頭なかった。


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