ふざけんな!!
藤森は怒っていた。 ハルナの手を引いたまま、一直線に自分のアパートへと向かう。
ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!
一体何に対する怒りなのか、どこへ向かっている感情なのか、 自分でも分からなくて対処に困っていたのだが、これだけは分かった。
この女は、無かった事にして忘れてしまおうと思っているのだ。 昨夜の事を。
このまま何事もなく部屋へ戻って、何事もなく会社へ出社して。 藤森の事を忘れてしまおうと思っているのだ。
ふざけんなーっ!!!
ムカーッ!
藤森は話すことは得意ではなかった。 正直言って、昔、そのせいで女に振られたことは数知れない。 そういえば、昨夜も、大事な事は全然何にも言っていなかった気がする。 でも。
むかついてしょうがなかった。 悲しくてしょうがなかった。 悲しい事が全然伝わっていないんだという事実が、ムカついて仕方がなかった。
何にも知らない顔をして、 目の前の藤森の事なんて、まったく眼中にいれないで、 バッサバッサと刃を振り回し、無造作に、無神経に、周囲を切り裂いている彼女に ただ、無意味に、巻き込まれて傷ついているのだ。藤森は。
一方的にも程がある!
藤森の、傷だらけの心臓を、 今すぐ胸から取り出して、 彼女に見せてあげられればいい
藤森は思った。
そうすれば、分かる。
何故、こんなにムカついているのかも・・・・
いつからか
藤森が、ハルナから、目が離せなくなっていたのも・・・
・・・それなのに!
無かった事になんか、されてたまるか!
確認するように、つかんだ手に力を込める。 ハルナの手は小さくて、やわらかくて、 一瞬、潰してしまうんじゃないかと、怯んでしまいそうになったが。
馬鹿にすんなよ 奥歯がギリっと鳴った。
手は、離さない。
帰す気なんか、毛頭なかった。
|
|