君を宝物みたいに大切にするよ・・・
そんな言葉に、女はいともたやすく騙される。
本当はそんな気。
全然・・・なかったくせに。
始まりは突然。 そう、あまりにも唐突に 女ってやつぁー、うっかり何かのスイッチを押してしまったりするのだ。
朝だ。 朝日が唐突に視界に突き刺さり、春菜は不快な気分と共に脳の覚醒を強いられた。 朝だよ・・・朝。あ〜具合悪ぅ〜
立花春菜。28歳。現在二日酔い。
枕元の時計を探りながら、ぼんやりと今日は休日だった事を思い出す。 頭が痛い。口の中が気持ち悪い。そういえば昨日歯ぁ磨いたっけ?・・・ってんなわけないか。もう、最悪。 明らかに飲みすぎである。 毎度の事ながら、起きる時のこの具合の悪さを、飲むまえにちょっとでも思いだすことが何故できないのだろう。 なんて毎回考える事だけど、一度だって実行できたためしはない。 まぁ、そんな事出来てれば二日酔いなんてありえないんだろうし、そもそもいろんな事を忘れる為に酒を飲むのだから、そんな記憶から真っ先にデリートだ。 なんて事を考えながら、唐突に、春菜は探った右手にちょっとした違和感を感じた。 ドキッと心臓が跳ね上がり、急速に意識が浮上する。
と、いうか。 枕元にあるはずの時計が・・・ない。 ・・・と、いうより。
実はさっきから違う物が春菜の手のひらに触れているのである。 さわさわと指をすり抜ける感触。糸のように細いけれど、これは・・・
本能的に何かを察知して、春菜の脳の起動が一瞬フリーズしかける。 なんか・・・嫌な予感・・・っていうかこれって、・・・髪の毛?!
「起きたかよ、酔っ払い。」
髪の毛。もとい男の声が、一気に春菜の意識を眠りの淵から引きずり出した。
がばっと! そりゃー、もー、跳ね起きる。
目に入ったのは
白い壁、フローリングの床に無造作に置かれたコンポ、大きな白いカーテンに、何故か、どでかいクリスマスツリー。 そして春菜が乗っかってるのは、部屋の殆どを占拠してしまっている、これまた白いシーツのダブルベットの上で、春菜が包まってるのは肌触りの良い白の綿毛布・・・
・・・えっと。 つまり、まったく見慣れない物ばかりで・・・
「・・・おい。」
春菜は頭を抱えた。 ああ〜・・・ がくぅっと項垂れる。
「おい。」
いや、見慣れてる物は、あった。 無造作に脱がれた黒いワンピースと、ストッキング・・・これは、自分の。 それと・・・
「おいっ!聞いてんのかよ?!」
今、声を荒げたこの男!
「うるさぁい!聞いてるってば!!!」
視線を向けて、ギャンと噛み付いた。 藤森淳。23歳。独身。 目に入ってたけど、敢えて無視してたんだっつーの!
春菜の勝手な自己嫌悪によるヤツ当たりで怒鳴り返された藤森は、一瞬びっくりしたように目を見開いたあと、
「ハラ、減らねぇ?」
と、とっぴょーしの無いことを口にした。 「・・・え?」
それって、今、適切??
一瞬混乱する。
なんていうか、今、二人はベットの中で。 朝だし。 考えたくないけど、明らかに全裸だし・・・ なんっていうか、昨晩、何をヤッたかなんて一目瞭然なわけで・・・
「何、食いてぇ?」
混乱している春菜をよそに、藤森はバサッと勢い良く毛布を蹴り上げ、フローリングに降り立つ。 「俺、もうハラペコだよ。」
つーか、どうでもいいけど、見えてんすけど・・・。 あ、そうか、こいつは終わった後に何も着ない派か・・・
なんとなく凝視してしまっていた春菜をひょいっと振り返り 「何、食いてぇ?」
・・・と。飄々とした顔で、もう一度尋ねるモノだから。
「・・・朝マック」
答えてしまった。 だっていいじゃん。好きなんだし。 藤森はにやっと笑うと
「じゃ、行こうぜ。悪ぃがここにゃー何もねぇんだ」 と、無造作に引っつかんだ春菜の下着を放り投げた。
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