夜勤の途中で、信二の父が倒れた。軽い心臓の発作だと言われた。酒と煙草と夜勤を止めること。医師が、厳しい顔をして告げた。 「24時間のコンビニなんて、無理だったんだよ。信二、お父さんを楽にしてやってちょうだい。」 公子が出勤したとき、人気のない店の中で、母が信二に神妙な顔をして言っていた。 「おはよう。公子さん。…信二、わかったね。…公子さん、昨夜、お父さんが倒れてね、今、入院しているのよ。軽い心臓の発作だそうだけど、お酒と煙草と夜勤をね、止めるように言われたの。…私、お父さんの病院に行ってくるから、公子さん、後、お願いしますね。」 「はい。お大事に。行ってらっしゃい。」 公子は、業務に取り掛かった。信二と一緒に品出しをする。出勤途中の客がやって来て、レジを信二と並んで2台、開放した。 朝の波が収まる頃、公子は掃除を始めた。 「この店、酒屋をコンビニにするのに、一番真っ先に乗り気だったのは、逃げた女房だったんだ。だから、いつも、お袋は、酒屋のままが良かったって言うけど、実際、コンビニじゃなく酒屋のままだったら、とうに潰れていたと思う。でも、家族で24時間経営って、年老いた両親には、すごい負担になってるんだ。親父も、すぐに退院できるだろうけど、今までみたいな仕事は無理だ。」 公子は、相槌を打ちながら聞いているが、掃除の手は休めない。 「多分、お袋も、店には出られない日が来るんだろうな。」 公子は、黙って手を動かしていた。 客が来る。信二は品並べを中断して接客をしている。公子は、トイレ掃除をしていた。公子に出来ることは、この店で、懸命に働くこと。トイレも店もピカピカに磨き上げて、丁寧な接客をすること。信二や湯浅の家の人たちのために、時々、母の代わりをすること。それだけだ。 トイレ掃除を終えて、出て来た公子は、信二と一緒にレジに並ぶ。公子はおでんと肉まんの用意をしている。信二は、レジ周りの在庫を点検していた。
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