秋の晴天の下、運動会が盛大に行われ、信二は打ち上げまで参加している。公子は、信太と孝太の信頼を裏切ることなく、打合せ通り走った。汗と心地よい興奮、公子は湯浅の家族とバイトの男の子達と一緒に、コンビニに戻って通常業務をしてから、帰宅した。 公子と子供達は、運動会を境に、急速に信密度を増して行く。 公子が明るくなり、公子の両親も、近所の噂同様、信二との関係について憶測を拭えないようだった。 「公子、湯浅さんとこの信二さん、奥さんが逃げてから、もう4年も音沙汰がないんでしょう。あちらさんも、あなたに良くして下さっているようだし、奥さんがねぇ、あんたさえ良かったらって、私に言って下さってんのよ。」 初耳だった。私さえ良かったらと、信二の母が、公子の母にそういう話をしていたなんて、知らなかった。近所だし、当然親同士も顔見知りの仲だ。親同士がそういう話をしていたとしても、不自然ではない。が、公子は、黙って俯いた。 「そりゃ、あちらには2人も、子供がいるけどね、あなただって、みっともないことになっちゃってんだしね。こっちは、もらってくれるってとこがあるだけ幸いだわよ。」 公子は、母の言いたいことがわかる。 「周りがどう思おうと、私と湯浅店長、そんな話したことないし、そんな素振りさえないのよ。」 「だって、湯浅さんのところは、そのつもりでいてくれてるのよ。あんたさえ良かったら、あちらのお母さんが、信二さんにその話をしてくれるんじゃないのかねぇ、甘えたら、どう?」 「…もう、破談になるのは、恐いのよ。」 公子の小声に、母は口をつぐんで俯いた。 「そういう話になるなら、あのコンビニを辞めなきゃいけないようね。本当に、店長とは何でもないし、何にもならないわ。」 「だって、公子、独り者同士・・・」 「母さん、やめないか。公子は仕事をしてるだけだ。向こうだって、従業員には良くするもんだ。それだけ、公子が仕事をちゃんとしてるということだ。妙な噂は、あんたたち、暇な婆さんが立ててるだけなんだから、当人には関係ないことだ。」 父に一括されて、母は黙って公子の顔を見た。 公子は自分の部屋に戻る。 定年退職をして家で趣味に高じている父、ゆったりと、友達同士で温泉に行ったり、楽しんでいる母。信二の両親だって、公子の両親と年が変わらない。嫁が来れば、楽になれると、思っているに違いないし、公子の両親だって、公子を片づけたくて仕方がないようだ。だからといって、公子が、信二との関係をどうこうできるものではない。信二は、仕事と、子供たちに対する公子の親切への礼以外、口にすることはないのだ。 周囲の憶測だ。 公子は、それでも甘い期待を膨らませる自分を、呪っていた。
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