真弓は、改札口から構内を一気に駆け下りた。 切なさよりも惨めさに、腹が立っていた。 1年と少し、付き合っていたはずの伸也に、別の女がいたとしても、 それを改札口のところで、まともに見たとしても、 真弓は、やはり、としか思わなかった。
高校を一緒に卒業しても、伸也は大学に、真弓は専門学校へ進路が分かれた。 こうなるのは時間の問題だと、感覚として、知っていた。と、思う。 別れを切り出されるのと、こういう形で終焉を迎えるのも、大差はない。 真弓の通う専門学校が、超がつくくらい忙しいものではなく、 真弓も勉強とバイトに一生懸命にならず、誘われるままコンパに行ったりしていたら、 逆の光景を伸也に見せることに成っていたのかもしれない。と、思う。 遊ばなかったのは、伸也に義理立てをしたわけではなく、 真弓にとって、勉強とバイトが、 やっと好きなことだけを勉強できるから、多少、理想と現実にズレがあっても、 夢中になれることだった。それだけのことだ。
真弓は、入ってきた電車に、列の後ろについてゆっくりと乗り込む。 階段を下りて後方2番目の扉ではなく、階段を通り過ぎた前から2番目の扉。 同じ時刻の電車なのに、別の景色が、新鮮に感じた。 伸也は、真弓がこの電車を使っていることを熟知している。 学校が終わって、まっすぐにバイト先へ行く。19時32分発のこの電車。 伸也と何度も待ち合わせをして、同じ扉に乗り、 ラッシュ時の混雑に紛れて、抱き合って立っていた。 真弓の降りる駅までの4区間。それから、一緒に降りて、伸也が送ってくれる。 伸也の不定期なバイト終了の時間が合えば、必ず、繰り返していた。 伸也と会う日の間隔が徐々に伸び、伸也からのメールの内容が淡白になり、 会うときの打合せさえ、電話で話さなくなったのが、いつ頃からかさえ、 真弓は覚えていない。 最近、いつ会ったっけ? そう、思うと、フッと口元が綻んだ。 あたしの中で、終わってたみたい。
伸也が、真弓に見せるために、改札口で女とイチャイチャしていたのなら、 承諾した。と、告げたほうがいいのだろうか。 真弓は携帯を取出し、メールを開き、受信の伸也用フォルダに新しいメールがないこと を確かめてから、新規メール作成を開き、そして、顔を上げた。 暗くなった外の、見慣れた街の景色が通り過ぎて行く。
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