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作品名:snow 作者:津那

第1回   予期した失恋
 真弓は、改札口から構内を一気に駆け下りた。
 切なさよりも惨めさに、腹が立っていた。
 1年と少し、付き合っていたはずの伸也に、別の女がいたとしても、
 それを改札口のところで、まともに見たとしても、
 真弓は、やはり、としか思わなかった。

 高校を一緒に卒業しても、伸也は大学に、真弓は専門学校へ進路が分かれた。
 こうなるのは時間の問題だと、感覚として、知っていた。と、思う。
 別れを切り出されるのと、こういう形で終焉を迎えるのも、大差はない。
 真弓の通う専門学校が、超がつくくらい忙しいものではなく、
 真弓も勉強とバイトに一生懸命にならず、誘われるままコンパに行ったりしていたら、
 逆の光景を伸也に見せることに成っていたのかもしれない。と、思う。
 遊ばなかったのは、伸也に義理立てをしたわけではなく、
 真弓にとって、勉強とバイトが、
 やっと好きなことだけを勉強できるから、多少、理想と現実にズレがあっても、
 夢中になれることだった。それだけのことだ。

 真弓は、入ってきた電車に、列の後ろについてゆっくりと乗り込む。
 階段を下りて後方2番目の扉ではなく、階段を通り過ぎた前から2番目の扉。
 同じ時刻の電車なのに、別の景色が、新鮮に感じた。
 伸也は、真弓がこの電車を使っていることを熟知している。
 学校が終わって、まっすぐにバイト先へ行く。19時32分発のこの電車。
 伸也と何度も待ち合わせをして、同じ扉に乗り、
 ラッシュ時の混雑に紛れて、抱き合って立っていた。
 真弓の降りる駅までの4区間。それから、一緒に降りて、伸也が送ってくれる。
 伸也の不定期なバイト終了の時間が合えば、必ず、繰り返していた。
 伸也と会う日の間隔が徐々に伸び、伸也からのメールの内容が淡白になり、
 会うときの打合せさえ、電話で話さなくなったのが、いつ頃からかさえ、
 真弓は覚えていない。
 最近、いつ会ったっけ?
 そう、思うと、フッと口元が綻んだ。
 あたしの中で、終わってたみたい。

 伸也が、真弓に見せるために、改札口で女とイチャイチャしていたのなら、
 承諾した。と、告げたほうがいいのだろうか。
 真弓は携帯を取出し、メールを開き、受信の伸也用フォルダに新しいメールがないこと を確かめてから、新規メール作成を開き、そして、顔を上げた。
 暗くなった外の、見慣れた街の景色が通り過ぎて行く。


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