私はどうしてここにいるのだろう?
ここはどこなのだろう?
白い空間の中、翼をもった人達が並んでいる。
誰もが何も言わず。何も答えず。無表情だ。
この光景を見た私は…そうだ…こう思ったんだ。
堕天使だ。
堕天使の葬列だなと。
***
「う…ん」 「大丈夫か!?」 体が揺れている。振動が全身に伝わってくる。どうやら誰かにおぶられているらしい。 「すまない! そういう事になっていたとは知らなかった!」 この声。バインさんだ。そうか。あの草むらから出てきたのはバインさんだったんだ。 顔を上げると前にはアナさんがコモリちゃんをおぶって走っている。どこに行くんだろう? 「バイン! この先に城はあるんだナ!」 「おうよお姉さん! 待ってろよ! すぐに助け出してやる!」 助ける? 誰を? …ああそうだ。スワン達だ。早く助けなきゃ。 森を抜けて高い丘へと飛び出す。 遠くにはお城が見える。 お城の周りには城下町が見える。 だけどその町や城には人の気配がしない。 何もしゃべらない水溜りのように静まりかえっている。 城の上の空には美しい模様の魔法陣が輝いている。 あの模様はまだ未完成だ。 完成してしまったら何もかもおしまいなる。
早く―早く行かないと…。
えっ? 今のは誰の声?
また意識が遠くなる。 そうだ。 少し甘えさせてもらおう。 バインさん達がいてくれるんだ。 きっとスワン達を助けてくれる。 もう少しだけ眠らさせてもらおう。
―この現実から少しだけ…。
でも不思議だな? 私…バインさん達と話したっけ?
セガルは静かに目を閉じた―。
『堕天使の葬列(第一幕):完』
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