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作品名:赤い雫 作者:牛を飼う男

第1回   プロローグ

 キクちゃんへ。

 お元気ですか?
 山々は朱色に染まり始め、涼しい風が頬に伝わってきます。
 こちらはなんとか日常の生活を送っています。夫のヴィンセントは就職先で仲間から頼られているのか、はりきって仕事に出かけています。元は『13人の赤眼の者』で『4番目の息子』として神格化された存在だっただけに心配でしたが、ヴィンセントの強さを皆が認めてくれたのでしょう、私の杞憂に終わりました。今では国軍試験を受験することになり、大変な日々を送っているそうです。
 そうそう、キクちゃん、帝軍試験合格おめでとうございます。相棒のカンタロウ君と一緒にあのA級犯罪者クロックタイムを倒したことは、こんな田舎町にも届いています。エンジェルやアルフも娘であるキクちゃんのことを誇りに思っていることでしょう。
 キクちゃんならどんな困難にも立ち向かっていけそうな気がします。私はキクちゃんと始めて旅をした時、もし子供を産めたとしたらこんな元気な子がいいなと思いました。
 …そういえば、あの頃は戦死したゴードンやヒャッキもいましたね。私にとって始めての人生の先輩であり、生きる強さや儚さを教えてくれた人達でした。…ごめんなさい湿っぽい話になりましたね…。
 改めて試験合格おめでとう、そしてこれからもがんばってください。試験はあくまでスタートラインでこれからが大変だと思います。でも、キクちゃんなら大丈夫か?
 この村によった時は顔を見せに来てください。私の料理の腕も向上しましたので、美味しいものをいっぱい作ってあげられると思います。(ダイエットしているのならご迷惑かもしれませんね)
 それでは、また。

 マテリアより。

 PS
 私とヴィンセントの間に赤ちゃんができました。まだ生まれていませんが、私のお腹の中で動いています。

 ただ―――

 ―――時々、このお腹の中の赤ちゃんに恐怖を感じる時があります。


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