それは私の記憶。 または年の離れた兄から聞いて、 まるで私の記憶と同化した追憶のノスタルジー。
そう遠くない昔のこと。 東京からそんなに離れていない小さな町の外れの、 新興住宅地から歩み出たところに一面の菜の花畑があった。
私の視野の真ん中に青い空があり、 まわりには濃い黄色の菜の花が咲き乱れていた。
高い空の上に一羽の雲雀(ひばり)が現れ、 一点に静止するように羽を羽ばたかせている。
その頃の私はランドセルを玄関先に放り投げ、 よくお気に入りの黄色の絨毯の上に寝そべっていた。 同い年の近所の子が上から覗き込む。
「帰ろ! ひょっこりひょうたん島が始まるよ!」
雲雀はさえずりながら視界の隅に消えていった。
〈おわり〉
『雲雀』の語源【三省堂提供「大辞林 第二版」より】 ・空高く舞い上がり、幅広い翼をはばたき、停止するように飛びながらよくさえずるスズメ目ヒバリ科の鳥。
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