20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:追憶のノスタルジー超短編集 作者:西村かおル

第1回   雲雀(ひばり)
 それは私の記憶。
 または年の離れた兄から聞いて、
 まるで私の記憶と同化した追憶のノスタルジー。

 そう遠くない昔のこと。
 東京からそんなに離れていない小さな町の外れの、
 新興住宅地から歩み出たところに一面の菜の花畑があった。

 私の視野の真ん中に青い空があり、
 まわりには濃い黄色の菜の花が咲き乱れていた。

 高い空の上に一羽の雲雀(ひばり)が現れ、
 一点に静止するように羽を羽ばたかせている。

 その頃の私はランドセルを玄関先に放り投げ、
 よくお気に入りの黄色の絨毯の上に寝そべっていた。
 同い年の近所の子が上から覗き込む。

「帰ろ! ひょっこりひょうたん島が始まるよ!」

 雲雀はさえずりながら視界の隅に消えていった。

〈おわり〉

『雲雀』の語源【三省堂提供「大辞林 第二版」より】
・空高く舞い上がり、幅広い翼をはばたき、停止するように飛びながらよくさえずるスズメ目ヒバリ科の鳥。


次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 458