静原の質問に自信満々に答える大西部長。その答えを聞いた俺たちは一斉にザザッとビデオから離れた。
「知人から頼まれたんだよ。ヤバイビデオがあるから調べて欲しいってね。中身はまだ見ていないんだが、ちょうど今全員集まっているしな。これからみんなで検証を始めようじゃないか」
「呪いのビデオって……あの見た者は必ず死ぬって言う……」
「さ、貞○が画面から出てくるっていう、アレかよ!?」
「ぼ、僕、映画で見ました!」
「見てはなりません!見れば恐ろしい事に〜〜!!」
部室内は大パニック状態。今野の水晶にも何か得体の知れない物が映っており、それを見た俺達はさらにパニックに陥る。そんな中、部長だけが鼻歌混じりにそのビデオをビデオデッキに入れようとしていた。気がついた俺は慌てて部長を肩を掴み止める。
「何やってるんすか部長!」
「いや、ただ再生しようとしただけなんだけど……」
ガチャガチャと何食わぬ顔をしながら、部長がビデオをセットする。何をやっているんだこの男は?!
「見たら死ぬんですよ、俺たちを殺す気ですか!?」
「いや、それは映画の話でしょ……」
俺が止めるのも空しく、無常にも部長は再生ボタンを押した。俺たちは一斉に目を瞑り叫んだ。
「あああああ〜〜〜〜ん!!」
だが、部室内に響き渡ったのは俺達の声じゃなかった。女の叫び声……と言うか、喘ぎ声が響き渡る。恐る恐る目を開けて見るとテレビ画面に裸の女が映っていた。一瞬、硬直する俺たち。一体何が起きているのか良く分からない。
「……何よ、これ?」
「エロビデオ……だよな」
「鼻血ブーーー!!」
「大変だ!高橋が鼻血を出してぶっ倒れやがった!」
「見てはなりません!見てはなりません!見れば恐ろしいことが〜〜!」
その時、部長がポンと手を叩いた。
「間違えて持ってきちゃった。コレ、俺が昨日ダビングしたヤツだわ」
――ズコッ!
全員でずっこける。
「何をやっているんですか部長!アホですか!」
「いやぁ、悪い悪い。預かったビデオにもラベルに何も書いてなかったからさ。似ていたんで間違えちゃった。失敗失敗」
てへっ、と舌を出す部長。全然可愛くねぇ……。
「あああああ〜〜〜〜ん!!」
その間にも大音量でテレビ内の女は色っぽい声を出し続ける。こんなに大きな声を出されたら外に漏れてしまうんじゃないか?部員全員でエロビデオを鑑賞していたなんて思われたらシャレにならねぇ。
俺は慌ててビデオを取り出そうと停止ボタンを押した。
「あああああ〜〜〜〜ん!!」
だが、ビデオは止まらない。
「あれ、おかしいな?」
俺はカチカチと何回か押してみる。だが画面には相変わらず色っぽいねーちゃんが悩ましい動きをして映り続ける。
「おい、どうしたんだ?もう止めてくれよ。それとも続きを見たいのか?」
部長がイヤラシイ目をしながら言う。
「いや、止めようとしているんですけどね、あれれ、このこの、……おかしいな」
――ドンドン!
その時、部室の扉を叩く音がした。
「おい!この声はなんだ?!外まで聞こえているぞ?
「まずいわ、顧問の風間よ。早くビデオを止めて!」
「さっきからやっているんだけど、止まらないんだよ!」
静原に言われるまでもなく、停止ボタン、取り出しボタンも押しているがビデオは止まらない。ちっくしょ、一体どーなっているんだ?!
「テレビの電源を切れ!」
天草が叫んだ。そうか、とりあえずテレビを消せばなんとかなる!俺は慌てて、テレビの主電源スイッチを押した。だが……。
「あああああ〜〜〜〜ん!!」
「止まらねぇ!なんでやねん!」
――ドンドン!
「おい!お前ら何をしているんだ!この扉を開けろ!」
「ヤバイ、高橋の鼻血が止まらないぞ!」
「見たら呪われる〜〜!!」
「は、早く止めて〜〜!!」
な、なんでこんなことに……。このビデオ、呪われているんじゃないか……はっ!
俺は部長の顔を見た。部長はニヤリと笑う。
「だから言ったでしょ、呪いのビデオだって」
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