「なんだい、よく見たらガキじゃないか」
拍子抜けた声を出した女は、ナイフをパチンとたたみ懐にしまった。そして立ち上がるとパンパンと体についた埃をはらう。
「ったく、せっかく獲物にありつけると思ったのにこんなガキが相手じゃねぇ。坊や、いったいこんな所に一人で何しに来たのさ?誰かと一緒じゃないのか?」
女はワイの頭をポンポンと叩く。完全に子ども扱いされとる……。ワイは女の手を払いのけた。
「ガキ扱いすんなや!ワイはこう見えてもお前より年上やで!」
黙って聞いてりゃ、ガキだの坊やだの、一体ワイを誰やと思っとるんや!
「へぇ〜、年はいくつなのさ」
女がニヤニヤしながら聞いてくる。
「千と五十や!」
「ぷっ!あはははは!」
女は噴出すと腹を抱えて大笑いした。何も面白いこと言っとらへんで?
「そっかそっか、それなら坊やは私より年上の大人だなぁ。ぷぷ、わるかったな、子ども扱いして」
「バッツ、その姿じゃあ言っても説得力ないニャ〜」
部屋が安全だとわかったのか、いつの間にか隣にペケがいた。
「坊やの猫か?可愛いじゃないか」
女はペケの喉をコロコロと転がす。ペケは気持ちよさそうにニャーと鳴いた。ちなみにペケの言っている言葉は使役しとるワイか、ある程度の魔法力が無いとわからへん。女には普通の猫がじゃれているように見えとるはずや。
「坊やの名は?」
名前やて?ふふん、この女ワイの名前を聞いたらど肝抜かすで。
「聞いて驚くな?覚えた呪文は年の数だけ、忘れた呪文も年の数だけ、無く子は黙る、いい女は股を濡らす、サウザンド魔道士の異名を持つ天下のイケメン大魔法使いバッツ様とはワイのことやで!」
ふっ……決まった。
得意のポーズをバシッと決め女を見据える。
「バッツ?あのスケコマシ魔道士バッツと同じ名前なのか?あんたの親もろくな名前をつけないねぇ。可哀想に……」
「誰がスケコマシ魔道士やねん!ほっとけ!」
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