小走りに扉に近づき部屋の中を覗いて見ると、中央に冒険者らしき姿をした女が倒れていた。生死は定かでは無いが、この部屋にモンスターかトラップがあるのは間違いない。うかつに近づくのは危険や。となると、ここは使い魔の出番やな。
ワイはペケを見た。
「バッツ、見てくるニャ」
「お前が命令するんかい!それはワイの台詞や!」
いかん、思わず突っ込んでしもうた!
遅いと思いつつも慌てて自分の口を手で押さえる。物音に反応するトラップやったらマズイで……。だが、何も起きなかった。どうやらその手のトラップでは無いらしい。
その場を動こうとしないペケを横目に、ワイはゆっくりと女に近づいた。
「おい、しっかりするんや。大丈夫か?」
女を抱きかかえ揺さぶり起こす。脈はあるようだ。胸を強調するようなタンクトップに短い黒の皮ズボン。肌の露出が多い身軽な服装をしているところから戦士ではない。となると盗賊か、ワイと同じ魔法使い……。そう考えると一人でここに倒れていることが不思議や。トラップを解除するのが専門職の盗賊は戦闘力が低い。モンスターがいるこの遺跡に入るなら当然他の奴らと組んで来ているはず。魔法使いにしたってそうや。魔法の詠唱には時間がかかるし、その間は完全に無防備になる。そうなると壁役となる屈強な戦士達とパーティを組むのが定石なんや。まぁワイはそんな足手まといなんて必要あらへんけどな。
「う、ううん……」
目を覚ました女が虚ろな目でワイを見る。よく見るとえらい上玉やないか、このねぇちゃん!
「大丈夫ですか、お嬢さん」
ワイは顔を引き締め彼女の目をまっすぐと見つめた。そして目の前には鋭いナイフが見える。……ナイフ?
「引っかかったね、お馬鹿さん。さぁ、有り金とこの遺跡で見つけたアイテムを全部出しな」
「え、えっと……」
ようするにだ、これはどういうことや?
倒れていたお姉さんを格好よく救出する。
↓
目を覚ましたお姉さんがワイに一目惚れ。
↓
酒池肉林!
……のはずが、なんでナイフを突きつけられとんのや?あれれ?
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