「全く、ひどい目に会ったニャ!だいたい普通は、さっきのようなトラップを踏まないために『浮遊』の呪文を唱えておくのが魔法使いの常識ニャ!バッツは一体何年魔法使いやっているニャ!」
確かに床から一定の距離を浮いていられる『浮遊』の呪文をこんなトラップだらけの遺跡内では常に唱えておくのは魔法使いの間では常識の話や。ワイかてさっきまで唱えておったんやから。まぁワイクラスになると無意識に床から浮いているイメージを考えるだけで『浮遊』の効果を得ることが出来るんやけど、坂になっとる通路を見た時に普通に登るイメージを考えてもうた。こんな時こそ『浮遊』を使って楽できたのになぁ。ダブルで間抜けなことをしてもうたで。だがペケだけにはそんなことを言われとうない。
「お前に説教される覚えはあらへんで?!だいたい自分だって背中の翼の存在忘れておったくせに。お前こそ一体何年使い魔やっているんや?!」
「それにしてもますます腹が減ったニャー」
「人の話を聞けや!」
ったく、またそれか。さっきからそればっかりやな。この大食らいの役立たず猫が。まったく、食う事と言う事だけは三人前や、ホンマ呆れるで。
――グー。
腹の音が鳴った。ペケの顔を見る。ペケはオイラじゃないと首を振る。ワイの腹の音やった。まぁ確かに遺跡に侵入してから何も食べとらへんかったし、さっき全力疾走もしたしな、そりゃあ腹も減るか、うんうん。
ワイの腹の音を聞いたペケは何かを期待するかのような眼差しを送り続ける。
「しゃーない、次の部屋で飯休憩でもするか」
そう言うと、ペケは目をパッと輝かせ一目散に駆け始めた。
「バッツ、早くするニャ!おいて行くニャよ?」
ホンマ、現金なやっちゃ。さっきまで動けない〜とか言っていたくせに。まぁ小腹も減ったし、次の部屋でカップラーメンでも食べるかな。
突き当たりのドアをまで到達したペケは、短い手で器用にドアノブを回し扉を開けた。そのまま部屋に駆け込む。全く、部屋にモンスターやトラップでもあったらどうする気や。
とか思っていた矢先にペケが部屋から顔を出した。
「バッツ、こっちに来てあれを見るニャ」
どうやら何かを見つけたらしい。
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