「ギニャー!!」
「ペケ、お前そこを動かないって言っとったよな?根性であの玉をなんとか支えるんや!」
「根性でどうにかなるレベルじゃないニャ!」
ワイらは一目散に坂を駆け下りた。冗談じゃあらへん、こんな所でぺしゃんこになってたまるか!
ワイは天井を見上げた。天井と床の間は玉の縦幅より広い。あそこに逃げ込めば……。
「よーし」
ワイは走りながら呪文の詠唱を始めた。
「風の精霊よ、汝の主バッツの名において命じる。えーっと……なんやったっけ?」
――ズコッ!
ペケがズッこけた。そのまま玉に巻き込まれ……そうな所を全力疾走で回避しおった。惜しい、実に惜しい。
「一体何をやっているニャ〜!バッツのつまらないボケで思わずズッコケて死ぬところだったニャ!しっかりするニャ!」
「わかっとるわい!千以上の呪文を覚えておれば度忘れする呪文だってたまにはあるんや!えーい、とにかくワイの体を軽くするんや、頼んだで風の精霊!『飛翔』!」
怪しい呪文の詠唱やったけど、なんとか通じたみたいでワイの体は途端に軽くなった。大事なのはやっぱり魔法力とイメージ、そしてハートやな。言葉なんちゅうもんは二の次や。
ワイは飛び上がると天井に張り付いて玉をやり過ごした。
「バッツ!自分だけズルいニャ!オイラも助けるニャ!」
悲痛な叫び声をあげる全力疾走中のペケ。ワイは呆れながら言う。
「お前はアホか?背中に自前の翼があるやろ。普通に飛べばええやないか」
ワイの言葉を聞いたペケはゆっくりと自分の背中を見た。そしてハッと気がついた顔をしたかと思うと、すぐに飛んで天井に張り付いた。
蝙蝠と猫の合成獣であるペケにとって空を飛ぶことなんて朝飯前。あいつ、混乱しとって自分の翼に気がつかなかったんやな。全く、ワイよりボケとるで。
――ゴゴゴゴーン!
もの凄い音と共に巨大な玉は壁をぶち抜きどこかへと転がっていった。
ワイとペケはお互い天井で顔を見合わせると安堵のため息をつく。とりあえず安全のためにそのまま空中浮遊したまま先へと進むことにした。またさっきみたいにトラップを踏んだらたまらんからな。
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