「あのなぁ、ワイらの今回の目的知っとるやろ?この遺跡に封印されている伝説の神器『降魔の杖』。これをなんとしても手に入れんとあかんのや。それにさっきも見たやろ、今この中には他にも降魔の杖を狙っとる冒険者達がわんさかおるんやで?こんなところでモタモタしとったらアイツらに先を越されてまうやないか」
今日から解禁され出入り自由となったこのミラノ遺跡。伝説の魔女ミラノが残した数多くのアイテムが眠ると言われているこの遺跡は、今まさにソレを狙う冒険者で溢れかえる群雄割拠の時代を迎えとる。中でも魔女ミラノが愛用していたと言われている『降魔の杖』はこの遺跡の言わばメインデッシュ。その杖の効果は魔法の心得を持つ者が持てば魔力を数倍に増幅し、魔力を持たない者でも天地を破壊する魔法が使えるようになると言われとる。そんな杖を誰もほっとくわけがあらへん。きっと今でも腕の覚えのある猛者どもが我先にと遺跡の奥目指して突き進んでいるハズや。
ワイはここに来る途中に出会った調子のいいあの男を思い出していた。アイツ、自分は駆け出しのトレジャーハンターで、目的は降魔の杖じゃなく別にあるだなんて言っとったけど、ワイの目は誤魔化されへん。『降魔の杖』が目的じゃなかったら、いったい何の用でこの遺跡に来とるっちゅうんや。それにあの身のこなし、あの腕、相当経験を積んどる高レベルのもんや。ホンマ、モタモタしとれへんで。
「それにしてもバッツのこんなに一生懸命な姿を見るのは、前にマールの『英知の書』を盗もうとした時以来ニャ〜」
ペッペッと口から光ゴケを吐き出しながらペケが言う。
「そりゃそうや!言っとくけどワイはこのままで済ます気はあらへんで?そりゃあなぁ、今はこんな小間使いみたいなことやらされとるけど、必ずチャンスを掴んでアイツにかけられたこの体の呪いを解いたるで!これはそのための第一歩なんや!」
ちなみにアイツとは一応師匠であり、憎き仇でもある魔女マールのことや。くそっ、あいつの顔を想像するだけで腹が立ってくる。なんてったって、この体の呪いはマールにかけられたんやからな!
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