ワイは『俊足』の呪文を唱えた。これで今までより素早く動けるで。
「よくもやってくれたな、この鉄クズめ。スクラップにしてやるわ!」
ミラノ像は口から冷気のブレスを吐き出した。ワイはそれを素早くかわし、奴の懐に飛び込む。そして『飛翔』の呪文を唱え、その勢いでミラノ像の顔面を蹴り上げながら奴の頭上に飛び上がった。
ミラノ像は一瞬硬直したかと思うと、突然首を半回転させ怒りの表情を向ける。そして今度はその口から勢いよく炎を吐き出した。冷徹は氷、怒りは炎ってワケか。
「なめんなや!『樹氷壁』!」
巨大な氷の柱が空中に現れ奴の炎と激突する。
――ジュワアアアアッ!
大量の水蒸気が発生し、部屋全体を覆った。一気に視界が悪くなりお互いの姿が見えなくなる。ワイは距離を取り、奴の出方を待った。だが奴もワイの出方を待っているのか一切物音をたてなくなった。突然部屋に静寂が訪れる。
ジッとその場でしゃがみこみ息を潜める。だが、大量の水蒸気のおかげで部屋は高温で息苦しい。ワイの額に汗が滲み出す。奴は一体どこや……。
その時、水蒸気の中から見慣れた光が放たれるのをワイは見逃さなかった。奴はあそこか!
ワイは飛び上がり奴に向かって呪文を放った。魔法拡散塗料が塗ってあるアイツには魔法が一切通じへん。だが、アイツの体は金属でできとるんや。これなら効くハズや!
「食らいやがれ!『剛雷槍撃』!」
――ガガガガーン!
爆音と共に現れた巨大な稲妻の槍が、水蒸気を切り裂き奴の脳天を刺し貫いた。奴の体は金属や、『魔法拡散塗料』が塗ってあっても電撃は伝導するで!
「ガオオオオオン!」
奴は断末魔の叫び声をあげた。
バチバチと頭の先から足の先まで奴の体中に電気が伝わっていくのが聞こえる。そして、電気が収まると同時に奴はその場に膝をつき、白い煙をあげピクリとも動かなくなった。
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