メラメラと燃え盛るミラノ像の脇を通り抜け、ワイは台座に近づき目的の杖を探す。
「杖、杖っと。おーい降魔の杖〜、どこにあるんや〜?」
だがそれらしい物は見つからない。おかしいで、ここに無かったらどこにあるって言うんや。絶対ここにあるハズや。
ワイは身を乗り出し台座の奥まで調べようとした。
「バッツ!後ろ!」
「へ?」
――ドガシャアッ!
トライの声が聞こえ振り向いた瞬間、ワイは巨大な拳に殴られ台座もろとも吹き飛び壁に叩きつけられていた。
「ゲフッ……!」
台座はバラバラに砕け散り、足元に無残な姿をさらす。そこに巨大な影が伸びてくる。 見上げると目の前に全くの無傷なミラノ像が突っ立っていた。そうか、さすがラスボスやな、そう簡単には勝たせてくれへんか……。
ミラノ像にはしっかりと魔法を無効化する『魔力拡散塗料』が塗ってあったようや。そんなことにも気がつかへんとは、ワイとしたことが迂闊やったで……。
「ゴオオオオオン!」
ミラノ像はそのまま床に這い蹲るワイを蹴り上げた。ワイの体は壁と床の間をまるでボールのようにバウンドする。
「ぐほっ……!」
口から放たれた鮮血が床を真紅に染める。アバラが何本かイッたみたいや……。さらに奴はワイめがけて巨大な足を踏み下ろしてきた。間一髪転がってそれをかわす。だが、まるで逃げ回るアリを踏み潰すがごとく、執拗にミラノ像は次々と足を踏み下ろしてきよる。気力でなんとか転がりながらかわすが、ついに部屋の角まで追い詰められてしもうた。
「ちい……これ以上体が動かへん……」
ワイはミラノ像を見上げた。ゆっくりと拳を振り上げる奴の笑い顔がまるで勝ち誇ったように見える。いかん、血を少し流しすぎたか?それにしてもコイツの顔、どっかで見たような気がする……。
「バッツ!しっかりしな!」
拳が振り下ろされる瞬間、トライが割って入りワイを抱きかかえた。そして素早く拳をかわすと、ミラノ像の股の間をくぐりぬけその場から脱出した。
「大丈夫か?」
トライが心配そうに顔を覗き込む。
「くっそ〜……、女に助けられるなんて、ホンマ格好悪いで……」
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