ワイはトライを見据えた。
「あ、いや……」
リュックから紋章を取り出した時から、どうもトライの様子が変に感じた。妙にソワソワして、まるでこの紋章を持っとったらマズイみたいやで。コイツ、何か知っとるんとちゃうか?
「そ、そう!さっき一緒にいた冒険者達がそんなことを言っていたんだよ。強すぎて歯が立たなかったから逃げてきたってね。私が見たわけじゃないんだ」
冒険者達、ねぇ……。
確かにこの紋章があった部屋には強力なガーディアンがおった。だけど他の奴らが先に入ったような形跡は無かったんや。もしワイらより先に入ったのなら、あのガーディアンとの戦闘の形跡が少なからず残っとるハズや。それが無いっちゅう事は、あのガーディアンの存在を知っとるのは、倒したワイかアイツぐらいしかおらへんちゅうこっちゃ。それにトライは冒険者達と言ったが、『達』ってことは少なくとも二人以上のパーティの事を指す。だけどアイツは一人で行動しとった。
「バッツ、何をボーっとしているニャ?早くその紋章をハメるニャ」
「あ、ああ……」
トライは何かを隠しとる。だけど、今はそんなことよりもこっちの方が先決や。モタモタしとったら他の冒険者達がやってこないとも限らへん。さっさと目的を済ませるのが懸命や。
窪みに紋章をあてがい、ゆっくりとハメる。
その瞬間、扉が突然眩しい光を放ち、ギギギと大きな音を立てて開き始めた。扉が開くその音は長きの間封印されていた歴史を物語るようで、重く遺跡内に響き渡る。
「さあいよいよ大詰めや。まってろよ降魔の杖!ワイが必ず手に入れたるで!」
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