「私がちょっと、か弱い女を装えば鼻を伸ばした馬鹿な男が寄ってくる。そして油断している隙にこの麻酔針でプスッ……て寸法さ」
胸の谷間からトライが鋭い針を取り出して見せる。ワイは相槌を打ちながらも目線は一点に集中していた。で、でかい……。
「やつらこの遺跡で色々見つけているだろうしねぇ。私は苦労せずお宝を回収出来るってワケさ。さしずめ私がバラで奴らはミツバチってところかしら?ま、今回はミツバチの幼虫が来ちゃったんだけどね、坊やも大人になったら女には気をつけな、アハハ!」
大きな高笑いをあげながら、トライはワイの背中をバンバンと叩いた。
バラの花ねぇ。綺麗な花にはトゲがあるって言うけどホンマや。
「どっちかって言うとミツバチを働かせる女王蜂って感じニャ〜」
「うまい!それはうまいでペケ!」
ペケが珍しくおもろいことを言った。
「何がうまいんだ?」
トライが不思議そうに見る。トライにはペケの言っていることは聞こえておらん。て言うか聞こえたらヤバイ内容や。
「あー、えっと……そう!こいつってばこの光ゴケが大好物なんや!」
ワイは壁に生えている光ゴケを掴み取りペケの口に押し込んだ。
「ふごっ!ふがっ!」
腹が減ったとか言っとったし、ま、ちょうどええやろ。
「へぇ、コケが好きな猫なんて珍しいねぇ」
トライは物珍しそうに咳き込んでいるペケを見た。
「それにしてもトライこそよく一人でこんな奥まで来よったな。ワイかてここまで来るのは結構てこずったのに、一人で来れたとはとても思えへんで?」
「ああ、途中まで他の冒険者達と一緒にいたんだよ。中々腕の立つ連中だったんだけど、運が悪くてさ。遺跡のトラップに引っかかって戦闘不能になっちまった」
トライはクスクスと妖しくほくそ笑んだ。嘘や、トラップなんかじゃない。絶対こいつにやられたんや、間違いないで。ワイは思わず身震いした。マールと言い、ミラノと言い、女っちゅうのは怖い生き物や。油断しとったらホンマ痛い目みるわ。
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