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作品名:魔道士バッツ、目指せ酒池肉林! 作者:ヒロ

第1回   バッツとペケ
 ガチャガチャと背負っているリュックの奏でる音が遺跡内にこだまする。ここに潜入してから、もうかれこれ3時間は経っとるやろか。

「歩きっぱなしの足にこの坂はこたえるで。ホンマきっついわ」

 ワイはため息交じりにツバの広い帽子をあげると、急な坂になっている通路の先を見やった。ぼんやりと淡い光に照らされ二十メートルくらい先に扉が見える。どうやらあれが次の部屋のようやな。次で終わりやとええのやけど。

 窓一つ無いこの遺跡は光が一切入ってこない作りになっとる。なのに壁から発せられる淡い光のおかげで遺跡内はほんのりと明るい。壁を指でこすってみると、こすった部分から光が削げ落ち、変わりにワイの指が淡く光った。やっぱり光ゴケや。

「こんな所まで繁殖しとるんやな……」

 ワイは思わず自分の偉業に感動し、その場で立ち尽くした。錬金術で品種改良した発光するコケ、光ゴケ。ある程度の湿気を持った場所にばら撒けば、後は勝手に繁殖し至る所を照らし続けると言う便利な代物や。コイツをあの伝説の魔女ミラノがこの遺跡に採用しよったと言うことは、ワイも魔道士として一流だと認められた証拠や。くー!感動やで!

「バッツ、オイラ腹が減ったニャ〜」

 後ろからついて来ていた使い魔である黒猫のペケが情けない声をあげる。気分良く感傷に浸っとったのにぶち壊しや。

「あっそう」

 適当に流して先に進もうとすると、ペケが裾に噛み付きワイを引っ張る。

「もう駄目ニャ〜!腹が減って動けないニャ〜!」

 ペケがジタバタし始めた。こうなるとコイツはテコでも動かへん。この腐れネコめ……。あ、そうや!

 ワイは壁に張り付いている光ゴケを掴み取るとペケの口に突っ込んだ。

「ふごっふがっ!」

 ペケはより一層ジタバタした。ざまぁみろ、いい気味や。


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