カウントダウンが終わると同時に、鷹緒と沙織の携帯電話が同時に鳴った。あけおめメールというべきメールが、一斉に入ってくる。 律儀に返す沙織の横で、鷹緒は軽く溜息をつく。 「……二人でいる時くらい、メールやめない?」 そう言った鷹緒に、沙織が首を傾げた。 「年明けの今くらいいいじゃない。私は一緒にいる時も、いつも鷹緒さんの電話の最中とか待ってるよ?」 「それは仕事の……」 と言いかけて、鷹緒は苦笑する。 「そうだな。仕事もプライベートもないよな」 「鷹緒さんもメールすれば?」 「おまえへのメールも億劫なのに?」 「もう。年明けくらい、いつもと違うことしたっていいじゃない」 そんな会話をしながらも、沙織はメールを打つ手を止めない。 手持無沙汰の鷹緒は、自分へ来たメールを見ながら今年を振り返り、大切な人たちの顔を思い浮かべる。 やがてメールを打ち出した鷹緒に、沙織が横目で微笑んだ。 「メールする気になったの?」 「うん。大事な人だけに……」 「あ。ちょっと妬いちゃう」 「馬鹿言ってんなよ。でも、なくてはならない存在の人にね」 からかう沙織に苦笑しながらメールを打って、鷹緒は携帯電話をテーブルに置いた。 それと同時に、あなたにメールが届く。
あけましておめでとうございます。 昨年は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いします。 今年があなたにとって、素敵な一年になりますように……。
よくあるようなたった数行のメッセージだったが、普段ほとんどしない鷹緒からのメールに、受け取ったあなたは、レアな感情を抱くことだろう。 どうぞ今年もよろしくお願いします。
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